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DO-U 「月刊中小企業家」は東京中小企業家同友会が毎月発行している情報誌です


陶山嵩弘さん
ネットリサーチ(株)

ファームウェアとネットワークの開発請負、中小企業のネット経営・社員教育のコンサルティング
1978年創業 資本金1600万円 従業員11名
渋谷支部


 聞き手
 下村 正人(広報部)





自分のよさも他人のよさもわかる人間づくりがよい仕事の前提

経営理念
すべての人々を尊敬し、責任と誇りをもって、豊かで明るい社会の発展に貢献します。

企業目的
■ネットワークづくりを通して(お客様第一主義)
私たちは、顧客のニーズを的確に捉え、明るく、豊かな社会に貢献します。
網の糸のような協調の精神と(社員第一主義)
豊かで幸せな人生と、企業の発展が一致できる会社を目指します。
中身の良さで、オンリーワン企業を目指します。(商品第一主義)
中味の良さで、存在感のある会社を目指します。

事業目的
規模より質の経営を目指します。(健全な財務比率の確保に努めます)

 

【下村】 陶山さんは昨年東京同友会に復帰されたと聞いていますが。
【陶山】 六年前まで渋谷支部にいましたが、経営が大変になって一時退会していました。その後V字回復を進める中で共同求人に参加しようと四年半ほど神奈川同友会にいました。自分の個性が強すぎるから合わないのかなと思って退会した直後に、東京から声をかけていただき再加入しました。東京に戻ってきて、東京同友会が随分進化しているのを感じています。
【下村】 創業された経緯は。
【陶山】 大手企業にいましたが、自分の存在感を実感できる中小企業で働きたいと、一旦システムメーカーに入った後、昭和五十三年、三十四歳のときに独立しました。一人で始めて最高時二十数名ほどいましたが、その後二名にまで落ち込んだこともありました。自己資本比率六〇%台の、累積納税額見合いの内部留保があったから、再出発できたと思っています。
【下村】 二十五年前に社名を決めるときに「ネットリサーチ」に想いを込められたとか。
【陶山】 はい。一つ目の「ネット」はコンピュータや通信のネットワークの分野で仕事をするという意味、二つ目は私たち一人一人を一本の糸、それを編み込んだ網をネットにたとえて、チームワークによって仕事をすることを意味しています。網ですからお互い引っ張りあい、つまり責任が求められるわけですが、やり遂げたときは達成感が大きい。三つ目はグロス、ネットのネット、つまり中身。規模が小さくても中身はどこにも負けないものにしよう、というのが創業のときからありました。リサーチというのはリサーチ&デベロップメント、限りない追求と発展という気持ちが入っています。
【下村】 経営が大変になった時、どのように乗り越えたのですか。
【陶山】 かつては社員を増やし規模を大きくするという方向に向かっていたんですが、九三年に一社集中していた顧客からの仕事が激減するという事態になりました。社員を増やしたばかりの時で困りました。続けるか、たたむか。自分が本当にやりたいものは何かをみていって、結局売上高とか人数といった規模ではなく、好きな仕事でオンリーワンになることだと結論しました。そこで、社員に呼びかけたことは、仕事の見通しも立たない、残業代もない、ボーナスも払えないかもしれないけど、この仕事を精一杯やりたい気持ちを第一にしよう、と。そしてV字谷を越えてきたわけです。その後神奈川同友会に入って経営指針書作成の勉強会で、その気持ちをそのまま理念にすればいい、というのが見えてきました。

「ネット」には経営理念が凝集

【下村】 「責任と誇りと働き甲斐をもって」ということばにはどんな気持ちが込められていますか。
【陶山】 うちの仕事はプログラミングなどのシステム開発です。関わった人の人間性が反映される業種だと思います。要求どおりの性能を出し納期を守るにはどうしたらいいか、と考えていくと、人間性の反映そのものなんです。できたものをオープンにして互いにチェックしあい、矛盾のないものをつくるんですが、問題を指摘したときに自分の人間性を責められた気分になることが多い。自責の念の強い人と他責の念の強い人がいて、前者がほとんどです。だから私は普段から「自分のいいところはいっぱいあるでしょう、その能力を発揮し、まず自分を褒めなさい」と言ってきました。その気持ちがこのような表現になっています。
 先ほどの三つのネットの概念「ネットワークづくり、網のような仲間、中身のよさ」、これを企業目的に置き換えると、「お客様第一主義、社員第一主義、商品第一主義」にぴったり対応できたんです。経営指針の勉強会で、十年後に一人当たり経常利益を十倍にするにはという問いかけがあって、私はそれに反発を感じました。V字谷で「心のリストラ」を体験した私には、右肩上がりの目標は過去のことに思えたからです。これからの時代は、社会に役立つ自分の仕事に全力を尽くして日々完全燃焼する充実感こそ自分の道だと整理できたので、その気持ちを素直に文章化し理念としました。「豊かで」は本当は「心豊かに」とすべきだったかもしれません。

【下村】 そういう思いを社員には意識して伝えていますか。
【陶山】 そうですね。採用時、入社教育、年度方針発表会の時など機会あるごとに、こうした話はしています。社訓では「すべては自分で選んでいる」と表現しています。仕事上の目標と日々の成果は全員が毎週、毎日「週報」に書き込みますが、ユニークだと思うのは、仕事を通じて自分のどんな点に成長を目指すのか、そのポイントを記す今週の目標欄、今週の感想・反省欄や上司のコメント欄というのがあって、直属上司はもちろん、私も社員の一人一人とeメールで対話できることです。本人の思考タイプ等を考えながら具体的に書くよう指導しています。近頃は対話の深まりと社員の成長を実感できてとってもいい感じです。成功のポイントは「目標は未来に、目的は現在に」と社訓に書いたように、未来指向の目標と、「現在をあるがまま受け止める感性」のバランスのとり方だと考えています。今年の社訓には「止まって観ることは完了への第一歩、完了は明日への第一歩」と書き足そうと考えています。システム開発でも同じ哲学が必要なんです。システムはナノセックの高速で動くけど、瞬間、瞬間を止めて観ないといいシステムはできないという共通点を感じています。

「性弱説」にたつ人材教育

【陶山】 人は気づいていないだけで自分が思っている以上にすばらしいものを持っている、これを社員に語りかけることばにしています。人間を性善説と性悪説でみることがありますが、私は、基本的には性善説に立っています。つまり人格自体は決して悪人ではない、ただ誤解や忘れものをしがちなだけ。それを「性弱説」と称しています。表面の「問題」は憎んでも「人格」は憎まずです。「人在」も、本当に自社に合った人を採用すれば「人材」になりますが、無理に採用すれば「人罪」になってしまいます。これは採用した社長の責任です。自分たちの会社をきちんと説明する、これが経営指針だと思います。会社の弱みも含めて正直に説明します。理念に共感してくれる「人材」を集めて共に「人財」に育ちたい、その指導法がコーチングです。これをやって社内がすごく活性化しているのを感じています。
 自主・民主・連帯の自主について、私なりの思いがあります。自主的に参加というのは当たり前、自分の内面を見たとき、自分の足りない面ばかり見て自分が尊敬できなければ、他人も尊敬できません。自分なりに自分のいいところをいっぱい見つけると他人の話も聞けるし、人の強みも素直に尊敬できる。そういう自主ができて初めて民主的に物事が進められる。そんな思いを指針の中にちりばめています。

【下村】 将来の会社づくりのイメージをどう描いていらっしゃいますか。
【陶山】 まだ漠然としていてまとまっていませんが、「顧客や同僚から信頼されて、あてにされる技術者の集団、家族や社会から生き方においても信頼される人の集団」。端的にいうと全員が経営者になってくれることを願っています。指針にも「社長をあと四年で交代する、その後社員の中から次期社長を選びます」と書いています。
【下村】 仮に社員の中から独立したいという人がいたら認めますか。
【陶山】 かつては分社化を積極的に謳っていました。社長にしてくれないといってやめていった社員も実際にいました。しかし「待遇に不満あり」といって四年前に退社していった元社員が、昨年「ネットリサーチのみんなの一生懸命な姿勢の中で働きたい」と再び入社試験を申し込むといううれしい出来事がありました。今やリーダー的存在で頑張っています。
 いま二〇〇三年度の経営指針をリーダー中心に作成していますが、コーチングスキルを学んで、職場がもっと活性化することを今年の目標にしたいと彼らは書いてくれています。コーチングは、我が社では常識になってしまいました。その根底にあるのが、「性善説、だけど性弱説」だと思います。

【下村】 コーチングとは自分のなかにある力、考えをうまく引き出していく、エデュケーションと共通する部分で、それが陶山さんのいう自主という部分の布石になっているということですね。今日はどうもありがとうございました。

 
 
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