経営者Q&A

内定者の取り消しは労基法違反か?(2000年7月)

【Q】採用内定者の採用取り消しは、労働基準法違反となるのでしょうか?

【A】この問題は、近年構造不況が長期化する中でしばしばご相談をいただくことがあります。
 採用内定を取り消された相手側も法律的にはそのとおりであるにしても、入社できるものと胸を膨らませて期待しているのですから、企業側は社会の信頼を損ねないように誠意を持って対応していただきたいと思います。
 労基法は、「この法律で労働者とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」(第九条)とし、このような「労働者」に該当したときから労基法の適用を受けます。そこで、同法上の労働者になるためには、次の二要件の充足が必要となります。
 1)事業所に使用される者で 2)賃金を支払われる者  
 ということで労働基準法には何ら明確な規定がないので、基準法に抵触することは原則としてありませんが、民法上違反となることがあり、その場合には基準法が希には援用されることもありうると考えます。将来内定の取り消し行為が増えるようであれば、法改正により明確に規定されることが望まれます。  
 採用予定の段階にとどまり、単に「内定した」という通知を会社が発したにすぎない場合であっても、労働契約の締結の予約とか、採用内定契約という一種の特別な契約が成立している場合もあります。  
 この採用予定の段階にとどまる場合の採用内定の取り消しは、あくまでも労働契約成立前のことなので、「労働契約の解除」には該当せず、労働法上の「解雇」にはなりません。この場合、解約が不当であれば、その責任は、予約契約の不当破棄という民法上の不法行為としての損害賠償責任のみを負い、採用内定がこの段階の場合には、まだ労働契約は成立していないので、会社は"入社強制"という義務は負わず、取り消しの責任については金銭賠償で解決しうることとなります。この場合の損害賠償金額は、問題が公表されない性質のものだけに明白ではありませんが、採用内定取消無効事件で30万円の慰謝料が認められたケースがあります。  
 採用内定者......労働契約が成立し、その会社の従業員としての地位を取得した者。卒業という条件や入社日の到来という始期がついていれば効力の発生はその時からとなります。〔その取り消しは民法上の解雇にはならない〕  
 使用者が、当社従業員として採用する旨の確定的意思を表示(たとえば、入社誓約書や身元保証書の異議なき受領とか、入社日その他の細部通知や入社前教育の開始など)した後の取り消しは労働契約締結後の取り消しとなり、次のような正当事由がない限り無効となります。
 1)条件付労働契約の場合の条件の成就または不成就-卒業したら採用する、卒業しなかったら採用しない、所定の免許・資格を取得したら採用する等
 2)採用内定取り消し事由を約束している場合のその取り消し事由の発生-健康異常の発生等
 3)その他の不適格事由の発生-犯罪行為を犯しての逮捕、起訴等  
  なお、職安法施行規則では、新規学卒者の卒業後当該新規学卒者を労働させ、賃金を支払う旨を約し、または通知した後、当該新規学卒者が就業を開始することを予定する日までの間(「内定期間」という)に、これを取り消し、または撤回するとき、新規学卒者について内定期間を延長しようとするときは、公共職業安定所長または学校長にあらかじめ通知すべき旨規定されています。(第三五条)


(有) 大谷経営労務管理事務所 社会保険労務士 大谷悳彦(品川支部)
TEL 03-3763-8731

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