東京中小企業家同友会の政策・提言

1998年度東京都中小企業関連予算への政策提言と重点要望

 私ども東京中小企業家同友会(会員数2300人[企業経営者]、平均規模・約30名[従業員数]・約1500万円[資本金])は、昭和32年設立以来、自助努力による経営の安定・発展と、中小企業をとりまく経営環境を是正することに努めてまいりました。その一環として毎年、東京都の政策への要望を東京都及び都議会各党にお伝えし、対話を積み重ねて参りました。

 本年4-6月期の日本経済は、GDP 年率11.2%減と23年ぶりの大幅なマイナス成長となり、消費税率引き上げの影響が予想以上に大きいうえに構造改革の下での調整圧力が表面化してきたと報じられています。国民負担増による消費低迷、住宅不振などの影響は、景気回復局面に入っていなかった中小企業経営にさらに打撃を与えています。当会の『同友会景況調査(DOR) 』97年7-9月期のデータでも、売上高DIがマイナス10.28 とマイナス幅を拡げ、需要減が深刻化しています。すでに当会も指摘していたように、消費税率引き上げや医療費負担増による「政策不況」の様相が強まっています。(別紙資料編参照)

 会員からは、「官需、民需ともに減っている。急激な変化は小企業にとって体力を消耗した後(91年~)だけに最高につらい」(映像制作販売)とか、「経営上の努力はすべて尽くしたが、あまりに環境が悪く業界内にあきらめムードが蔓延、リスクをしょったビジネスをする人がいなくなった」という深刻な声が聞かれます。まさに今、日本の景気回復にとっても、中小企業経営にとっても正念場を迎えています。しかし、ここにきて、公共投資の頭打ちと、ビックバンを控えた「早期是正措置」をにらんでの金融機関による貸し渋りが明確になり、事態を一層深刻化させる危険が高まっています。東京都は、このような急激に変化する実態を中小企業家の声を聞きながら正確に把握し、機敏に対応することが強く求められています。

 私たちはこれまで、東京の事業所の9割と全就業人口の7割を占める中小企業の安定と繁栄こそが、東京の産業と都民生活の安定と発展を支えていると訴えて参りました。私たちは、自ら仕事をつくり、産業を起こし、空洞化がすすむ地域経済再生の担い手として、新しい経済と社会のシステムの創造の主体になることを望んでいます。行政は、そのような経営環境の整備・構築に力を注がなければなりません。東京都は今こそ、従来の政策のあり方から一層の中小企業重視の政策へスタンスを転換すべきです。

 現在、東京都が取り組もうとしている財政健全化計画で見直そうとしている中小企業制度融資や公共住宅の縮減は、不況をさらに後押しするものと懸念せざるを得ません。財政状況が厳しい中でも、大型プロジュクト・工事はできるだけ繰延べ・中止をする一方、中小企業の前向きの資金需要に積極的に応えたり、都民生活に密着した公共投資を拡充するなど、東京経済を底から活性化させることが求められています。それこそが、地域経済の安定と雇用の確保を支え、税収の健全化につながるものと私たちは考えます。

 以上の認識に基づいて政策要望を提出致します。関係各位のご協力、ご支援と共同の行動を心から切望致します。



重点要望1

 

金融ビックバンによる中小企業へのさまざまな影響が懸念される中、中小企業にとって政策金融はますます重要である。東京の経済社会を支える中小企業への金融支援を抜本的に強化されたい。その要点は、(1)中小企業の発展性を見つけ出し、育て上げるという信用保証理念の再確認とそれに基づく融資制度の充実、(2)地域に貢献する企業や起業家等への支援、③地域密着の新たな資金供給システムの形成、である。

 

[要望・提言事項]

 

  1. 苦境にある中小企業の資金面での閉塞状況を改善するため、無担保枠の拡大を第一に取り組むこと。ただちに大幅な枠の拡大が難しいのであれば、暫定的に例えば、無担保枠の3500万円を超える部分については、信用保証料率を若干上げて新しい枠を設定するなど工夫されたい。
  2. 保証付融資を利用する場合、保証料を払った上に連帯保証人が必要とされるのは、本来の信用保証理念の趣旨にそぐわないものであり、無保証人融資をふやすこと。少なくとも、第三者の連帯保証人を求めるのは止めること。
  3. 中小企業の信用力評価における物的担保主義を見直し、中小企業の技術力や潜在能力を評価する融資制度を早急に検討されたい。信用保証協会が経営者の能力や企業の将来性などからの評価を重視するよう指導を強めること。
  4. 「創造法」や「新分野進出法」などの基づいたものに加え、東京都独自の審査により、地域経済の活性化に貢献する企業や環境・福祉問題に取り組む企業、地域の雇用に貢献する等の地域貢献企業に対し、新たな保証枠を設けること。特に、小規模企業での後継者問題は深刻だが、経営意欲のある後継者に対する資金支援を起業家支援と同じように力をいれること。
  5. 各種助成事業の中で、開発に必要となる資金については、助成金の交付を待たずに供与を受けらるれようにし、助成後に返済する制度を検討すること。
  6. 新たな信用創造のために各種のベンチャー育成基金と交流を深めること。先端的・革新的かつ社会的責任性の高い中小企業を育成するため、一部行政の助成、一部ベンチャー基金が債務保証を行うなどミックスして信用供与ができるシステムを検討すること。
  7. 東京都信用組合協会が取り組んでいる「東京市民バンク」のように、社会的意義のある事業を志す市民・団体や起業家に資金・ノウハウを提供する地域密着の民間事業や、地域中小企業が相互協力で投資育成会社をつくって資金不足を補完したり、新事業を起こしたりする事業を都が資金等でバックアップするシステムを検討すること。
  8. 金融機関の支店の地域での開増設等を認める際に、地域への貢献や貸し付け高を基準に認可したり、、運用資金の一定割合を当該地域で行うことを義務づけるアメリカの「地域再投資法」を参考に同主旨の法律をつくることを国に働きかけられたい。
  9. 東京都の指定金融機関を富士銀行の一行だけでなく、地方銀行など地元金融機関も含めた複数行による交代制(輪番制)とすることを検討されたい。
  10. 金融ビックバンをにらんで金融機関による貸し渋りや債権回収の強化が目立つ。中小企業や善良な債務者の立場に立った金融専門家の協力も得ながら、金融相談窓口を都のしかるべき機関に設けること。



重点要望2

 

都内中小企業の経営環境は急速に悪化しており、厳しい局面に立たされている企業も目立つ。消費税率引き上げ後の消費後退は長引く様相をみせ、大企業に比べ中小企業は大きく回復が遅れている。緊急に中小企業への景気対策が求められる。ムダな公共事業は見直す一方、生活関連など良好な社会資本の整備は必要であり、中小企業への官公需発注の拡充を軸にして進められたい。

 

[要望・提言事項]

 

  1. これまでの大規模な「箱もの」行政を見直し、地域密着・分散ネットワーク型の施設の建設に転換すること。また、新規施設を建てる前に学校など既存の施設、福祉・シルバー関連や文化・スポーツ関連などの遊休施設の活用を行うこと。
  2. 官公需の中小企業への発注率を50%以上をめざすこと。特に、都営住宅、学校・保育所、などの改修及び耐震補強工事など都民生活に密着した中小企業向けの小さな工事を増やすこと。一定金額以下は中小企業に限定すること。
  3. 無理な工事の集中やダンピング、不良業者等により、原価割れ工事や手抜き工事が懸念される。ロアーリミット(最低制限価格)を堅持すること。建設資材価格、労務 単価、仮設・現場経費などは実勢を反映した適正価格で積算すること。また、年間工事発注の平準化に努め、集中工事の回避をはかること。
  4. 公募型指名競争入札および希望制指名競争入札の継続と公平性・透明性の見地からの改善をすすめること。大型工事に地元中小企業の参加を促進するため、大手企業と中小企業とのJV発注を進めること。
  5. 住宅建設において量から質が重視されつつある中で、リフォーム・メンテナンス市場にも重点をおいた住宅政策・金融をさらに進められたい。特に今後、東京では大規 模なマンションの建て替え需要が発生することが予測され、防災対策・まちづくりの見地からも公的なサポートが要請される。例えば、建て替え中の住民が2年程の短期で住む仮住い用の公的なマンション建設、都営住宅・都民住宅の空き室の活用などを進めること。
  6. 中小企業等の環境に配慮した物品の購入、「グリーン調達・購入」を強力に進めること。その際、納品業者がデッドストックをかかえないよう、ワンロットでの購入など配慮すること。



重点要望3

 

中小企業がさらに経営を高度化するためには、専門的人材の確保が不可欠である。産学官の知的人的資源を中小企業が活用できるシステムが求められており、とりわけ大企業のスペシャリストを中小企業が採用システムや各研究機関・大学などの研究課題・テーマのデータベース化とその活用が望まれている。

 

[要望・提言事項]

 

  1. 中小企業が新しい分野への進出等で退職者などの豊富な経験を活かせるシステムを検討されたい。これまでの技術アドバイザー等に加え、財務、マーケティング、組織改革、生産技術・品質保証、エンジニアリング、店舗指導等の専門家の人材データベースへの登録と紹介、費用の一部助成等が期待される。特に製造業分野での熟練OB技術者による若手技能者の育成や海外取引のための語学堪能者の派遣などが求められる。
  2. 中小企業と大学・研究機関との間をつなぐ媒介機関の設置に取り組むこと。また、大学(学生)と経営者の実践的な接点をつくることによって、学生の起業家へのインセンティブになるように機会をつくること。
    1. 大学・研究機関の研究テーマのデータベース化とネットワーク化をはかり、上記の中小企業情報・相談センター(仮称)などを通じたあっせんシステムを検討すること。
    2. 産学交流をはかり、大学の知的資源を中小企業が活用しやすい環境を整備すること。例えば、学生(院生)がグループ別に中小企業を担当し、教官の指導のもと、一定期間に経営者と定期的に面接しながら経営上の問題(市場研究、戦略プランニング、経営管理システム、製品デザイン、新規事業の可能性など)に対する解決策を考え、レポートで提出することなど。
    3. 大学生などが、在学中に企業で社会人経験をするインターンシップ制度を普及・定着させるため、受け入れ企業に対する助成制度や学生の交通費など諸経費への補助制度を検討されたい。特に、受け入れ企業と大学との相互協力がはかられる交流の場など制度化に協力されたい。当面、都立系大学、都立高専などから取り組まれたい。
    4. 当会が立正大学と協力して実施している「経営総合特論」のように、経営者が直に学生に実践的経営を教える機会を企画するなど学生の起業家へのインセンティブとなる場を提供されたい。
  3. 東京の中小企業は、激変する経営環境の中でさまざまな困難ではあるが可能性のある経営課題に直面しており、現実に精通した専門家による適切な助言を望んでいる。商工指導所などによる専門的な経営相談機能を強められたい。


重点要望4

 

「ゆとりと潤い」のある人間性創造都市東京づくりの為に職住のバランスのあるまちづくり、防災・環境保全型都市づくりを中小企業の参加ですすめる必要がある。これから大きな課題となる環境問題や防災・都市問題の解決に中小企業が貢献できる条件を整備することは大都市自治体の使命である。

 

[要望・提言事項]

 

  1. 東京都のすすめる環境保全型都市づくりへ多くの中小企業が参加・協力できるように条件を整えること。中小企業の環境ビジネスへの参入やエコ商品の開発への支援をすすめること。また、ISO14000など環境管理システムに対する中小企業への支援。
  2. 過剰包装の改善や事務用品の再利用など事業所がゴミをなるべく出さないための工夫を啓発し、ゴミ減量化に努力した企業への表彰制度など削減誘導策を実施すること。さらに、資源リサイクルのために中小企業が取り組む共同回収事業への支援を企画されたい。
  3. 排水処理など大企業の施設を地域中小企業や自治体に開放して一括処理することで施設の稼働率が安定し、費用が浮く効果をもたらす事業の検討。
  4. ゴミの減量化や再利用のために、商工指導所などにコンサルタント機能や環境ビジネスに関する相談・調査の機能をもつようにすること。
  5. バリアフリー社会(物理的障害及び精神的障害を排除した構造、仕様、設備を有する社会)づくりと住宅のバリアフリー化を地域の中小企業が参加して進めること。
    1. 「福祉のまちづくり条例」に基づき、障害や段差のない高齢者・障害者が安心して行動できるバリアフリーのまちづくりを地域の実情に詳しく、身近な関心と責任のもてる地元中小企業の事業確保につながるよう進めること。
    2. 福祉借り上げ住宅の建設の倍加と木賃アパートの建て替え促進による居住継続支援をさらに強めること。シルバーピア住宅建設の大幅促進と中小JV方式を進めること。
    3. 高齢者等住宅改修事業の推進と江戸川区のような住宅改修への助成制度を区市町村と連携して設けること。
    4. 在宅健康管理システムの開発すすめること。また、介護保健の適用も見据え、地域の高齢者への福祉・医療面からのサポートのみならず、一人住まいの高齢者などの金融や不動産の資産管理等での支援ができる人材の養成と総合的な相談・コーディネートの体制の確立を進めること。
    5. 現行の保健医療圏の線引きにより、練馬区や台東区等の高齢者に著しい不便が生じており、見直しを国に要望すること。
  6. 「東京大震災」に備えた防災対策事業を中小企業の参加で強力に進めること。
    1. 既存建築物の耐震診断を区だけでなく、東京都としても専門家を公募し、大規模に診断を実施すること。
    2. 防災向けの耐震防災住宅の建設や地下利用緩和を機に簡易地下室「地震シェルター」の建設の研究と普及・支援をすすめること。
    3. 都市防災不燃化事業の対象地域の拡大と個々の住宅の防災不燃化の推進。


重点要望5

 

変化の激しい時代にあって中小企業が政策・施策の受け身の利用者であるうちは、これから政策効果も限られたものとなる。自ら主体的に政策づくりに関わってこそ、その拡がりは大きいものとなる。政策形成の適切な局面で中小企業の参加を促すよう努力されたい。

 

[要望・提言事項]

 

  1. 「東京の活力ある産業を考える懇談会・最終提言」の結論にある通り、産業振興や労働施策を総合的に実施するための考え方を示す条例がなかったが、政策を総合的計画的に推進する法的根拠となる「中小企業振興条例」を当会を含む中小企業諸団体の意見を聞きながら制定されたい。
  2. 東京都知事が主催する「中小企業政策会議」を開催し、都内中小企業(団体)へ政策要望アンケートによる要望の集約と直接意見に当局者が答える場をもつこと。



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