2009年度東京都中小企業関係予算政策提言

2008年7月29日

東京都知事 石原 慎太郎殿

東京中小企業家同友会
代表理事  湯本 良一
政策部長  板橋 和彦
〒170-0005 
東京都豊島区南大塚3-39-14
大塚南ビル2階
電話03-5953-5671 
FAX03-5953-5672

2009年度東京都中小企業関係予算政策提言

[はじめに]
急騰する原材料価格への対策を

 我が国経済は、サブプライムローン問題を引き金に、原油・原材料価格の急騰の影響で急速に景気が悪化しています。また、小規模企業には銀行の「貸し渋り」も始まっているといわれ、中小企業の存続にとって困難な環境になりつつあります。
 経済白書でも示されているように、中小企業の経営に最も影響がある個人消費は低迷を続け、原材料価格の値上がりを価格転嫁することが大変困難な状況になっています。
 こうした急騰の背景に食糧危機や経済の混乱を引き起こすようなファンドの投機的行動があり、こうした行動にはEUなどでも議論されているような、必要な監視と国際的協調による一定の規制(例えば「トービン税制」など)が必要と考えます。異常な原油や原材料の高騰から産業と都民生活を守るため、緊急の助成や融資の対策をとられるよう要望するとともに抜本的対策を日本政府に働きかけることを望みます。



中小企業の努力を支援

 私達は、企業の収益が家計に還元され、消費が拡大し、企業の投資意欲を刺激する内需主導型の経済へ転換していくことが、中小企業にとっても、日本経済にとっても重要なことだと主張してきました。そのため、内需主導型の経済の柱に、中小企業対策をすえ、あらゆる政策の制定及び実施に当たっては中小企業に配慮する「中小企業憲章」の制定を国に要望しています。また、都道府県においては中小企業振興条例の制定を呼びかけており、近県では埼玉、千葉ですでに制定されており、神奈川県でも制定に向けた取り組みが始まっています。
 大企業の本社が集中する東京においても企業数の99.1%、雇用の75.3%をしめる中小企業の業績が本格的に回復し、家計を少しでもあたためる方向に向かうことが望まれています。私達中小企業も一層企業努力が必要であり、中小企業経営者団体としてこうした自覚にたった努力を呼びかけております。
 行政機関には直接的に個人消費を暖める政策を要望します。社会保障の充実や税の応能負担原則など財政政策に本来ある経済安定化の機能を活用することが望まれます。
 中小企業に対しては、人材確保難、石油・原材料価格の高騰など自助努力だけでは解決が困難な問題や、環境保護や個人情報保護対策、社会保険料負担など社会的コストの増大も、経営を圧迫する要因となっています。中小企業の経営努力に対する支援を要望します。
 また、私達中小企業家同友会は、一貫して企業倫理の確立を呼びかけてきました。倫理の欠如は、どのような言い訳をしても企業として許されるものではありません。同時に、行政にも、行き過ぎた規制緩和と過度の価格競争を見直し、ルールある市場作りを望むものです。



人材確保・育成、新たな市場づくり、事業承継・起業家支援を

 人口減少社会といわれ、東京でも10年後には人口流入もとまり、超高齢社会が到来するといわれています。行政には、本格的に少子化対策と労働力不足に対応されることを望みます。特に、中小企業の経営者やそこに働く従業員が働きながら子育てや介護ができるような社会システムを作ることが重要と考えます。
 人材育成は情報化社会といわれる中で今後の社会発展のカギを握ります。今生まれている経済の格差が教育の格差に結び付かないよう、すべての子供たちが充実した教育を受けられ環境を望みます。また、その内容として企業家精神の育成と職業教育の充実を要望します。
 中小企業が新たな市場にチャレンジできるよう支援と市場の整備を望みます。特に高齢者福祉などの社会保障の分野、環境問題や街づくり、地震や自然災害対策などを地域の中小企業が参入でき、適正な利益が得られる市場として整備されることを望みます。また、アジアとの経済交流が深まる中、中小企業が安心して参加できるような情報や支援が必要です。
 最後に、事業承継支援、起業家支援は、中小企業の減少に歯止めをかける重要な課題です。これは、単に経済だけの問題でなく地域社会・生活にとっても重要な問題でもあり、緊急の対策が望まれます。



【要望事項】

1. 急騰する原材料価格に対する緊急の支援と抜本的対策を

 原材料、とりわけ原油価格や食料の価格の高騰は国民生活や中小企業の経営を圧迫しています。この背景には国際的な需要が高まってきたこともありますが、異常な高騰はファンドマネーによる投機的な動きなしには説明がつかないとも言われています。
(1) 原材料価格の高騰による中小企業の経営悪化に対しては緊急の融資を別枠で要望します(下記参照3-(1))
(2)不公正取引への監視の強化を要望します。都は公正取引委員会任せにせず関係自治体とも協力し、不公正取引の相談を受け付けるとともに業界ごとの調査など強化されたい。
(3) 都は近県とも協力し、都市近郊農業を見直し、食料自給率向上に努力されることを要望します


2. 個人消費を喚起し、足腰の強い経済を

 消費が拡大し、企業の投資意欲を刺激する内需主導型の経済へ転換していくことが足腰の強い経済への鍵を握ります。多くの中小企業にとって個人消費の喚起は最大の活力の源泉です。

(1)ワーキングプアへの抜本的対策を要望します。労働者が安定した雇用と生活できる収入を保証することは企業の責任でもあり、中小企業も経営努力が求められる課題です。大企業は新卒の正規雇用を増やしているものの、非正規雇用を増やしているところや、期間雇用への変更で一時逃れしようとしているところもあります。

(1) ワークライフバランスが取れるよう企業への相談、援助を強めていただきたい

(2) 最低賃金の引き上げ(生活保護以上の水準)を要望します。

(3) 住居のない労働者に対して、敷金・礼金などに対する一時金の融資、及び身元保証等の支援をしていただきたい。

(4) 職業訓練所の充実とワーキングプアへの授業料の減免措置を要望します。

(5) 大企業の非正規雇用の割合に一定の上限を設け規制をすることを要望します。

(6) 日雇い派遣の禁止と必要な立ち入り調査を行うよう要望します。


(2)子どもや高齢者の医療や福祉を充実させることを要望します。マクロ的に個人消費を暖める経済効果と、中小企業の従業員が安心して子供を生み育て、高齢者を抱えても働ける条件を作るものです。

高齢者医療・福祉対策の充実で介護負担の軽減を

(1) 4万人をこえる待機者解消をめざし、特別養護老人ホームや老人保健施設などの整備(地元建設業者の仕事づくりにもなる)グループホームの家賃助成を要望します。

(2) 要支援や軽度要介護高齢者の福祉用具、家事援助、通所介助などへの支援の充実を要望します。

(3) 都市計画では、高齢者が歩いて生活できる街づくりに配慮するよう要望します。

安心して出産でき、働きつづけることができる社会へ

(4) 行政からの助成による出産費用の無料化を要望します。

(5) 安心して子供を預けられるよう、保育園を量質ともに充実させ、待機児童をなくすよう要望します。また、学童保育の充実も要望します。



3. 金融環境の悪化への対応

 急速に悪化する景気、一方で銀行融資の利率が中小企業の現状を無視し、徐々にあがる傾向にあります。また、小規模企業や建築関連業に対する「貸し渋り」も生まれています。信用補完制度と制度融資の充実が急がれます。

(1) 業種を限定せず売上げや営業利益が前年対比で大きく減少している企業に対して緊急特別融資 別枠で5000万円を上限に行うよう要望します。

(2) 区市町村や信用保証協会などの相談業務を拡充し、リレーションシップバンキング機能の充実、地域金融機関との連携などきめ細かな対応ができるシステム作りを要望します。

(3) 中小企業の借入金は白書でも「擬似資本」といわれており、「きちんと返済していること」と「営業利益があること」を重視し、長期及び繰り返し借り入れることができるよう、制度融資などの基準とされるよう要望します。

(4) 企業が「経営指針(経営理念、経営戦略、経営計画)」を作成していることを評価し、融資する制度を設計するよう要望します。

(5) 新銀行東京については、追加出資後も中小企業の資金調達に役立っているとは言えません。設立時の「中小企業を支援する」との理念に立ち返り真摯に検討されるよう要望します。



4. 中小企業の人材確保に対する支援の強化

 1社ごとでは無名に近い中小企業と資金力がありマスコミにも影響力の強い大企業とでは学生への訴求力に違いがあります。今後少子化が進む中で、中小企業分野の担い手や中小企業に蓄積されている技術の継承者を確保する上では大きな障害になります。

<中小企業に対する正しい認識の育成>

(1) 都および市区町村の職員、教師や父兄が中小企業に対する正しい認識を深めるよう指導されたい。職員や教員が中小企業での体験を一定期間行うことも、その理解に役立つと考えます。

(2) 先進国の中でも遅れている職業教育を抜本的に強めること。その際、地元中小企業の経営者の意見も取り入れ、職業観や企業の役割などについても取り入れられたい。

(3) 大学や高校の中小企業へのインターンシップの強化は職業教育の一環として重要です。短期の見学程度では真の職業教育にはならないとの声もあり、企業とも相談の上1ヶ月以上のインターンシップも検討されたい。また、学校側の指導体制も充実されるよう要望します。中小企業や経営者団体が協力するインターンシップの取り組みへの支援の強化も要望します。


<当面の雇用の確保>

(1) 高齢者の再教育、中小企業とのマッチングをカウンセリングなども含め丁寧に行い、人材の必要量を確保できるシステムを作るよう要望します。

(2) 外国人労働者の雇用推進と安心して働けるように労使双方の相談窓口の拡充をハローワークと協力して行い、当面外国人雇用支援センターの拡充を行うことを要望します。



5. 環境問題 環境確保条例の改定について

 都の環境確保条例の改正については、大規模にCO2を排出する事業所を対象に排出総量削減義務と排出量取引制度の導入が決められました。この点には賛同します。同時に中小企業としても、取り組みを積極的に進めることが求められてます。小規模企業者でも取り組めるよう環境を整備していただきたい。

(1) 中小企業の行うエコアクション21やISO14000などの取り組みに対して融資や助成などの制度を設け支援することを要望します。

(2) 中小企業が環境対策に取り組むための相談窓口を設け、必要な援助を行うよう要望します。

(3) 削減した中小企業にメリットがあるような排出権取引なども検討されたい

(4) 環境対策を行う行政区ごとの取り組みへの支援を要望します。チェーン店やフランチャイズ店なども地域の取り組みに協力するよう指導されたい。



6. 事業承継、新規創業を支援し中小企業の減少に歯止めをかける

 中小企業の競争は市場を活性化させる重要な役割を持っています。東京でも、中小企業の減少に歯止めがかかったとは言えません。新規創業数は多少増えてきたものの、今後予想される事業承継の問題を考えると抜本的な支援が必要です。

■国に対する要望

(1) 国が行う事業承継税制の改正は一歩前進したものとして評価できますが、承継者が今後死ぬまで事業を現在以上に維持できない場合やM &Aなどの企業売却を行った場合、逆に負担が増える可能性もあります。中小企業も社会の公器としての側面を持つものであり、承継後10年を期限として事業用の狭小地及び株式に対する相続税の減免を要望します。政府に対して改善を要望されたい。

■都に対する要望

(2) 後継者、創業希望者を対象とした「経営者教育」を抜本的に強化していただきたい。特に経営者団体の行う起業家塾や後継者塾などを対象にした支援を要望します。また大学のおこなう起業家セミナーなどへの支援も要望します。

(3) 保証協会の「創業アシストプラザ」は大変優れたもので、継続・拡充を望みます。同時に事業承継に対する総合的な相談をおこなうシステム-「事業承継アシストプラザ」(仮)も必要です。保証協会や地域金融機関とも協力し税制や支援施策、M&Aなども含め相談できる体制を作るよう要望します。

(4) 商店街の活性化は安心安全の街づくりの面からも重要です。商店街の若手経営者のリーダーを養成すること、行政が商店街の方々とよく話し合い空き店舗対策、活性化などの相談に必要な人材の配置も含め支援することを要望します。



7. 地震や災害に強い街づくりと地元建設業者の仕事づくりを一体にして進める

(1)建築業は「官製不況」とまで言われる建築確認申請遅延問題により大きな打撃を受けています。

(1) この点での引き続き融資などの支援を要請します。

(2) 行政による確認申請の体制を充実されることを要望する。(大手建設会社の関連企業に申請が集中する傾向がある)

(2)耐震診断、耐震補強、防災協力業務、電柱の地下埋設、ライフラインの確保、バリアフリー化など地元建設関連業者と地域住民の協力関係作り進める。

(1) 東京都住宅マスタープラン、耐震改修促進法に沿って、住宅やマンションの耐震診断・耐震改修をおこなうため助成金の増額、使いやすい制度、住民への啓蒙啓発、耐震促進協議会の結成などを進める。

(2) 学校・公共施設の耐震・バリアフリー化、ライフラインの安全確保、電線の地下埋設などを早急に行うこと。その際、地元企業を優先し、地域経済活性化につなげるよう要望する。

(3) 最近の急激な資材の値上がりを考慮し、公共事業や調達についてはその上昇にあわせて単価のスライド制を導入されたい。



8. ものづくりへの支援の拡充

 日本のものづくりの技術が改めて注目されています。中小企業も海外との経済交流が活発化し、アジアの中での分業体制で重要な役割を果たしています。この分野での市場を切り開き整備するための支援が重要です。

(1) 機械金属、印刷・製本、アパレルなどの集積を地場産業として位置づけ、活性化に努めるよう要望します。

(2) 技術の継承発展と技術者の養成は重要な課題(高齢者の再雇用も含め)であり早急に取り組まれたい。

(3) 中小企業にとってはきめの細かい支援が必要です。現場に入り、調査・支援できる行政の体制の拡充を要望します。

(4) 産業技術センターの機能を強化し、積極的に技術の蓄積指導、新製品の開発をサポートするよう要望します。

(5) 中小企業の海外取引・進出には情報とアドバイスができる窓口を整備・充実を要望します。



9. 中小企業の振興を自治体の重要な責務と位置づけ、あらゆる施策の実行に当たって中小企業に配慮する中小企業振興条例の制定を要望します。その具体化をはかるため以下の点を要望します。

(1) 中小企業経営者の団体や学識経験者などからなる中小企業振興対策審議会を常設し施策の具体化を図ることを要望します。

(2) 必要な人員の補充・配置など行政の体制の強化と予算の増額で、支援体制を充実させることを要望します。

(3) 幹部を先頭に自治体職員による中小企業の実態調査を定期的に行い、実情を把握するよう要望します。

(4) 中小企業の問題に関しては産業労働局で全体を掌握されたい。当面、景況調査においては建設業なども含め産業労働局で景気動向全体を把握することを要望します。


以上

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