民法(債権関係)改正に関する中間試案に対する意見書

法務省 御中

 

民法(債権関係)改正に関する中間試案に対する意見書

 

             2013年6月13日

             〒102-0074 東京都千代田区九段南4-7-16

電話03-3261-7201 Fax03-3261-7202

           代表理事 藤田明男

政策渉外本部長 三宅一男

 

  1. 個人保証の規制について

 <意見>

1)事業者の貸金等債務を主たる債務とする保証及び根保証について、個人保証を原則的に禁止するべきである。 

2)上記1)の例外として、事業者の業務を執行する者、その他法令で特に定める者が保証人となることは許容するとするのが妥当である。

3)ただし、将来的には個人保証が全面的に禁止される方向となることが望ましく、そのため民法改正にあわせて国会での付帯決議等がなされるよう図られたい。

 <理由>

 1)個人保証の問題点について

中小事業者が、銀行や貸金業者に融資の申込みをした場合に、経営者の所有する不動産に担保を設定させられるだけではなく、経営者の個人保証さらには経営者以外の者(知人、友人など)の保証を求められることが多い(以下、経営者以外の保証を「第三者保証」という。)。 

 そうすると、経営者としては、自らが保証人となることはもとより、第三者保証を付さなければ融資を得ることができず、やむなく知人や友人を訪ね、「貸し手側から第三者の保証人を立てることを求められている。迷惑はかけないので、保証人になって欲しい。」などと懇願し、了解を得ているというのが実情である。

 その場合、その友人や知人は、かねてから付き合いのある経営者の「迷惑をかけない」という言葉を信用し、また金銭貸し付けのような出費を伴わないこともあって、安易に保証人になることを了解する例が多い。

 しかも、その友人や知人には、他の中小事業者の経営者が多く、経営者同士が、お互いに保証し合っているというのが実態と言っても過言ではない。

 ところが、事業というものは経営上のリスクがつきものであり、例えば取引先の企業の経営不振のため多額の売掛債権等の回収ができないとか、受け取った額面の大きな手形が不渡りになったりするなどして、借主の事業者がやむなく倒産する例も多い。そうすると、経営者が破綻の責任を取らされるのはもとより、保証人となった知人や友人も借入金債務の残額返済を迫られ、それが返済できず第三者保証人が破綻し、ひいてはその保証人が経営する企業も破綻することになる例が散見される。さらには、経営者のみならず第三者保証人までもが自殺をするなどの例も散見される。

 また、個人保証は、中小企業の事業承継の大きな障害にもなっており、中小企業の更なる発展を妨げている。と言うのも、第二次大戦後、中小企業の経営を担い、発展させてきた世代は高齢化し、次の世代に事業を承継させて更なる発展をさせたいと考えているケースが多いが、次の世代が経営者になろうとした場合にも、同様に経営者保証のみならず第三者保証を求められ、それを実現できない場合には、例え事業自体が順調であっても融資を得ることができず、事業承継そのものが頓挫してしまう状況にあるからである。むしろ、事業承継をするケースでは、事業自体は順調に推移しているのであるから、事業自体の価値を評価して融資をするべきであるのに、実際はそのようになっていない。

 のみならず、個人保証は、事業の再チャレンジの阻害要因ともなっている。なぜなら、上記のとおり事業とりわけ中小企業の経営にはリスクがつきものであり、それにもかかわらず経営者を目指そうとする者は元来限られているところ、やむなく事業に失敗した経営者やその友人・知人等の第三者保証人(他の事業経営者)は、保証責任を問われて全ての資産を失い、生活すらままならない状況に陥ることも多く、このような者が事業に再チャレンジすることは極めて困難である。そうすると、融資において個人保証を重視する日本では、経営者を目指す意欲が阻害されてしまい、ますます経営者の人材難に陥ることになりかねず、日本経済にとって大きなマイナス要因となっている。

 そればかりか、そもそも、銀行などの貸し手側は、融資において借り手から利息を得ることにより利益(リターン)を得ているのでありから、借り手が存在して始めて貸し手側のビジネスが成り立つ関係にある。それ故、貸し手側にとって、借り手は、本来は対等なビジネスのパートナーである筈である。ところが、現状では、貸し手側は、借り手の経営者や第三者から個人保証を取ることにより、融資に伴うリスクを回避することができるので、リスクを取らないままリターンを得ていることになるが、これでは本来のビジネスとは言えず、借り手をビジネスパートナーとして扱っていないことになる。

 このような問題点から見ると、現在の日本で行われている個人保証を重視する融資慣行は、人道的側面はもとより、事業承継や再チャレンジの円滑化という日本経済の発展という観点、さらには対等なビジネスパートナーという観点から見ても、大きな問題がある。

  実際にも、信用保証協会は、2006年以降、保証申込みのあった案件について、経営者本人以外の第三者を保証人として求めることを原則として禁止した。その結果、近時において第三者が保証人として求められる割合は、政府系金融機関においては著しく減少している。

さらに、金融庁は、2011年7月に主要銀行や中小・地域金融機関向けの監督指針を改正し、「経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行の確立」を明記した。そこでは、民間の金融機関に対し、経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないこととする原則に沿った対応を求めているのである。

 そして、銀行のみならず貸金業者も含めて個人保証中心の融資慣行を改めることが緊急の課題であって、そのためには今回の民法(債権関係)改正において、個人保証を原則的に禁止するべきである。

2)個人保証規制のあり方と「経営者」の概念について

 そこで、このような問題点から見れば、個人保証を全面的に禁止することにより、融資慣行を抜本的に改めるべきであるとの意見も有力である。

 しかし、少なくとも株式会社の代表取締役などの「経営者」について、個人保証を全面禁止することは、問題がある。なぜなら、とりわけ、企業が受けた融資金について経営者が何ら返済について保証責任を負わないことになれば、経営者がその融資を受けた金員を流用したために企業が破綻した場合であっても、経営者自身は何ら借入金の返済についての責任を問われないことになりかねず、経営のモラルが失われ、融資も円滑に行われなくなるおそれがあるからである。

 それ故、今回の民法(債権関係)改正において、一挙に、個人保証を全面的に禁止することは困難であって、現時点においては「経営者」の保証は例外として許容することはやむを得ない。

 そこで、問題は、「経営者」にはどのような者が含まれるかという点である。

 これについては、「実質的な経営者」を言うものとし、実質的な経営者に保証をさせることで経営モラルを維持するべきであるとする意見もある。

 しかし、実質的か否かの基準が不明確であり、そのため「経営者か否か」を巡ってトラブルも多く発生するおそれがある。

 そこで、形式的な観点から経営者の範囲を決める他はないが、経営モラルの維持と融資の円滑化の観点からは、例えば事業者が株式会社の場合は、少なくとも代表取締役のみならず一般の取締役をも含めるのが妥当である。なぜなら、代表取締役はもちろん取締役も、経営に関与する権限を持っており、その権限を行使して、借入金の流用などの行為を防止するなど、経営モラルの維持を図るべきであるからである。また、中小企業の取締役の中には、経営について実際上の決定権を有している者が含まれている場合があり、このような取締役の保証を禁止することは、融資の円滑化にそぐわないと思われる。

 従って、「経営者」の概念については、少なくとも日本弁護士連合会が提唱する「事業者の業務を執行する者」という概念を用い、株式会社においては代表取締役のみならず取締役をも「経営者」に含めるのが妥当である。

 さらに、株式会社においては、取締役ではないが「株式の過半数を有する者」も、経営者に含めるのが妥当である。なぜなら、株式会社においては、このような株式の過半数を有するオーナーが実際の経営を掌握しており、借り入れた金銭の使途等について決定権を有しているケースも多いからである。

 のみならず、中小企業においては、代表取締役の配偶者で業務に密接に関わっている者なども、実際には代表取締役とともに経営に関与しているケースが多く、経営モラルを維持し融資の円滑化を図るためには、「経営者」に含め、個人保証の例外とすることを認めて良いと考える。

 それ故、今回の民法(債権関係)改正においては、次のような改正をしていただきたいと考える。

事業者の貸金等債務を主たる債務とする保証及び根保証について、個人保証を原則的に禁止する。

例外として、事業者の業務を執行する者、その他法令で特に定める者(株式会社においては株式の過半数を有する者、代表取締役の配偶者で業務に密接に関わっている者など)が保証人となることは許容する。

但し、将来においては、個人保証を全面的に禁止する方向となることが望ましく、そのため民法改正にあわせて国会での付帯決議等がなされるよう図られたい。

  1. 比例原則について

    <意見>

     事業者の貸金等債務について経営者保証を追わせる場合でも、その保証人の責任を限定するために、一定の条件のもとに、いわゆる比例原則を導入するべきである。

    <理由>

     経営者保証を例外的に許容した場合でも、その保証責任を合理的な範囲内にとどめることが必要である。なぜなら、とりわけ経営者保証においては経営者の資力に比べて過大な保証責任を負わされる例が散見されるところ、これを放置したのでは、事業承継や再チャレンジ等の妨げとなるからである。

     そこで、経営者保証においても保証責任が過度にならないよう、いわゆる比例原則による過大保証の規制を行うべきである。

     ただし、そのような規制による恩恵を受けるためには、経営者が、保証契約を締結するに際して、自らの収入・資力を正確に(過大ではない)申告することが必要であると考える。なぜなら、自己の収入・資力について、過大な申告をするような不誠実な保証人を、比例原則によって保護する必要はないと考えられるからである。

     さらには、自己が経営に関与する事業者の資産状況についても、事実に基づき正確(過大ではない)に申告させることを条件とすることも検討に値する。このように、事業者の資産状況を正確に申告させることよって「中小事業者の資産状況は正確な把握が困難であり、融資に際して個人保証を付さなければ融資金の回収がおぼつかない」などといった批判に対応することができると考えられるのである。

 

  1. 保証契約締結時の説明義務・情報提供義務について

<意見>

 事業者である債権者が、個人を保証人とする保証契約を締結しようとする場合には、保証人に対し、次の1)及び2)の内容を説明し、かつ3)及び4)についての情報提供をしなければならないものとするべきである。かつ、このような説明義務及び情報提供義務を債権者が怠った場合は、保証人は保証契約を取り消すことができるとすべきである。

1)保証人は、主債務者に代わって保証債務を履行することになる危険性があること。

2)連帯保証人が催告の抗弁、検索の抗弁、及び分別の利益を有しないこと、及びそれぞれの抗弁等の内容。

3)主たる債務の内容として、元本の額、利息・損害金の有無及び内容、条件や期限がある場合はその内容

4)保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合には、主たる債務者の資産又は収入、あるいは資産状況申告内容(情報)

<理由>

1)については、保証人が、主たる債務者がその債務を履行しないときには、その債務を代わって履行する責任を負うことを、情報として提供することは、もちろん重要である。

 そればかりでなく、この説明義務は、このような単なる情報提供義務ではなく、「保証債務を履行することになる危険性がある」旨の内容の説明義務でなければならない。なぜなら、上記の単なる情報提供義務にとどまる場合は、「保証人」になってもらいたい旨告げたのみで「保証責任」の情報提供義務を果たしたとされかねず、そのような説明では保証人が返済のリスクを負うことについての認識を持つことが困難であるからである。

2)については、催告の抗弁、検索の抗弁、及び分別の利益を有しないことを説明するのみならず、その場合にはそれぞれの抗弁等の内容も説明することを要求するべきである。一般市民のみならず中小企業の経営者が保証人になる場合は、このような抗弁等の意味が分からないのが通常であるから、その内容の説明も行わせることにより、連帯保証が通常の保証よりも危険性が高いことを認識できるようにすべきである。

3)については、主たる債務の内容として、元本の額、利息・損害金の有無及び内容、条件や期限がある場合はその内容について、情報提供させるのが妥当である。

4)については、保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合には、主たる債務者の資産又は収入、あるいは資産状況についての、申告内容(情報)を通知する義務を負わせるべきである。

この場合、客観的に正しい資産又は収入あるいは資産状況に関する情報を提供すべきであるとの意見もあろうが、実際にはそのような情報を入手することは困難であり、主債務者が申告した内容について情報提供すれば足りると考える。

 また、これらの説明義務や情報適用義務を履行させることを徹底するために、これに反した場合は、保証契約の取消権を認めるのが妥当である。

 

  1. 主たる債務の履行状況に関する情報提供義務について

<意見>

事業者である債権者が、個人を保証人とする保証契約を締結した場合には、保証人に対し、1)及び2)のような情報提供義務を負うものとすべきである。

1)債権者は、保証人から請求があったときは、同人に対し遅滞なく、主たる債務の残額及びその債務の履行が遅滞しているときは、その事実を通知しなければならない。

2)主たる債務の履行が遅滞したときは、債権者は保証人に対し、遅滞なくその事実を通知しなければならない。

また、このような義務に違反した場合は、債権者は保証人に対し、その義務を怠っている間に発生した遅延損害金にかかる保証債務の履行を請求することができないとするべきである。

<理由。>

上記の前段の情報提供義務を課すのでなければ、保証人が知り得ない間に遅延損害金が膨らみ、到底弁済ができない状況となるからである。

また、上記の下段のような定めをして、その義務の履行の実効性を高めるべきである。

 

  1. 根保証について

<意見>

事業者の代表者が退任する場合には、債権者に対し元本確定請求ができるとするのが妥当である。

<理由>

事業承継を円滑に行うためには、代表者の退任の際に元本確定をさせて責任の範囲を限定する必要があるからである。

                               以上

おすすめ勉強会

詳細

渋谷支部
4月26日(水)
ラグビー日本代表若きGMの驚く...
2015年9月19日。日本...
会場:渋谷フォーラム8 キング...
報告者:岩渕 健輔氏(元ラグビー日本代表ジェネラルマネージャー) Team Japan2020男女7人制日本代表総監督
渋谷支部・西部協議会
4月6日(木)
第11期 販売塾
大好評です!!ロングランで...
会場:東京中小企業家同友会・会...
報告者:販売力強化の第一人者・坂 陽風氏及びコンサルタント連合『青藍会』の強力講師陣
渋谷支部
4月20日(木)
もっと強く、新しい企業に!!第...
好評『販売塾』と両輪 も...
会場:東京中小企業家同友会・会...
報告者:販売力強化の第一人者・坂 陽風氏