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中小企業家群像

職人的技術と最新設備の融合 挑戦し続ける経営はまわりの協力があってこそ
童子 俊 一 氏

株式会社 日本熱電機製作所
代表取締役
童子 俊一 氏(北支部)

【会社概要】
住 所 東京都荒川区西尾久 7 ー 15 ー 1
創 業 昭和12 年 (1937) 7月
従業員 20名
事業内容 熱管理器具の開発・製造・販売 温度測定用
精密機械、温度センサの開発・製造・販売
U R L https://www.nndalloy.co.jp

「神は細部に宿る」とは近代建築のドイツ巨匠が実践した言葉だ。経営において細部をどこに求めるのかは、経営者自身の感性をたぶんに含むものであり、またその選ばれた細部を探求すること自体も果てしない旅路を意味する。
日本熱電機製作所(以下、NND)が掲げるテーマはまさに「0〜∞(ゼロから無限)」であり、これこそが自分たちのチャレンジ・フィールドであると謳い上げる。NND はモノづくりの過程で温度を測る際に用いられるセンサの超微細加工で最先端を走り続けている。センサの細さは髪の毛ほど、日本最細クラスで0.1㎜ の世界だ。また同社のチャレンジングスピリットはイメージカラーにも表れており、ゼロには青(シンボルは宇宙)を、無限にはオレンジ(シンボルは太陽)を配し、その間はグラデーションでつながれている。宇宙空間はマイナス270℃、太陽の表面温度は6000℃とされ、NND の温度センサはマイナス200℃から3000℃という日常を遥かに超えた世界を測定する。「さらに絶対零度から無限に続く超高温度までの測定の実現に向けて、挑戦し続けたい」と童子俊一氏。「同友会への入会は40年ほど前。当時はハローワークとのつながりを活かしたハローチャンスというイベントがあり、その過程でNND のチャレンジ宣言も生まれました。まぶしいほどの目標って、会員みなさんお持ちでしたよ」と語る。
NND 創業は昭和12年父君により月島にて。昭和47年に北区へと移る。そして思いがけない転機が翌年に訪れた。父君の急逝である。「私が大学を卒業して、少し経ったばかりの25歳の時に父が亡くなりました」。「経営を引き継いでも、何が何だかわからず。売り上げ減少にも苦しみました。ただ、小さい頃から現場は見ていましたから、運命みたいなものかなと向き合いました」と手元を見つめる。そして、童子氏は次なる一歩を模索しはじめる。創業当初よりビーカーやフラスコなど理化学機器の仕入れと販売が軸だった同社であったが、現在の主軸である温度センサ(シース熱電対)分野への注力を決めた。そして昭和59年、よりメーカーらしくありたいとシース熱電対の開発製造へと踏み切る。「しかし後発になるので激しい競争にさらされるのは間違いない。何を目標とするか。であれば、より小さいものを目指そうと決めました」と前を向く。
過酷な競争へと飛び込んだと自認をしてはいたが、センサ部品の素材を提供してくれる仕入れ業者の協力も欠かせなかった。「入ってきた素材を活かして、一気にやろう!」と社内を鼓舞し続けてきた実りがいまに引き継がれている。「コンマ単位の作業を顕微鏡を介して行う。職人技術と最新技術の掛け合わせです」。結果、シース熱電対を取り扱ってくれる業界と、その応用範囲(多点式センサの共同開発)も広がった。同社にはいわゆる営業部隊はいないが、ホームページからの問い合わせが国内外問わず増加中であるという。
人材に関しても都内高専からの入社があり、11年目を迎える中堅社員が育っている。またその高専つながりで3人の若手も活躍中。社員の年齢比のバランスもとれている。社内ではコミュニケーションを欠かさず、技術顧問を介してのオンライン講習なども実施。コロナ禍2021年には東京都立産業技術研究センターによる第1回INNOVATION PARTNERSHIP AWARD優秀賞を受賞した。「同友会で初めて参加をした全国総会でのグループ討論には刺激をもらいました。以来、年に1件ずつ新しい技術的なトライをし、それを記録に残しています」という実践の成果である。資料には平成5年より毎年の技術挑戦が記されている。
細部への心遣い、いや、遊び心は社内の至る所にある。新社屋の外には通る人の目を引く外気温度計が配される(むろん同社のセンサ事業を連想してもらうため)。そしてエントランスにはかわいらしい招き猫がお出迎えしてくれるが、そのほかにも猫の人形が階段の踊り場や作業部屋の入り口などで癒しを与えてくれる。
童子氏自身の癒しのスペースは海にあるようだ。ダイビングのライセンスを持ち、非日常な水中で浮遊感を味わう。「魚のような気分にもなって、普段の生活はなんなんだろうって感じるのが楽しい」と嬉しそうに語る。
「そうそう、2018 年に招いてもらった同友会古希を祝う会では [ 挑戦 ] をテーマに掲げました。まだまだ道半ば」と窓から見える、愛してやまない地元、荒川遊園の観覧車に穏やかな目線を送った。

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