イラン情勢かわらばん VOL6 中東情勢がもたらす建設業への影響と実務対応
東京中小企業家同友会 イラン情勢かわらばん VOL6
中東情勢がもたらす建設業への影響と実務対応
― 工期遅延と価格高騰にどう備えるか ―
現在、イラン情勢の中で資材ひっぱくする建設業、この中で、まず想定されるのが工期の遅延です。資材の納入遅れや供給不足により、当初のスケジュール通りに工事を進めることが困難になるケースが増えると見込まれます。ただし、過去の東日本大震災やウッドショックの経験から、適切な説明と手続きを踏めば、施主の理解を得ながら工期延長を進めることは十分可能です。重要なのは、口頭ではなく必ず書面で合意を取り交わすことです。これにより、後のトラブルを未然に防ぐことができます。
次に、契約前の段階での対応も極めて重要です。改正建設業法第20条の2では、資材価格の高騰など契約金額に影響を及ぼすおそれがある場合、事前に注文者へ通知することが義務付けられています。この「おそれ情報の通知」を行っておくことで、後に価格変更の協議を申し出る法的な根拠が生まれます。逆に、この手続きを怠ると、後から増額交渉を行う際に不利になる可能性があります。
https://www.qsr.mlit.go.jp/n-park/construction/pdf/R7_seminar2_kougi1-1.pdf
もっとも、今回のような国際情勢による価格高騰が「不可抗力」と認められるかどうかは微妙な判断となります。すでに中東情勢の緊迫化が続いていた経緯を踏まえると、「予見可能だった」と主張される余地もあるためです。だからこそ、事前通知を徹底し、リスクを共有しておくことが実務上の要となります。
さらに、経営戦略として重要なのが価格高騰への備えです。過去のウッドショックでは、「増額に応じる」という曖昧な合意だけでは実際の追加費用を回収できず、多くの事業者が負担を抱え込む結果となりました。この反省から、あらかじめ請負金額を高めに設定する、あるいは予備費を組み込むといった対策が有効です。多少価格競争力が落ちる側面はありますが、後から値上げを交渉する難しさを考えれば、合理的な判断と言えるでしょう。
契約面では、約款の見直しも欠かせません。「経済事情の激変」といった抽象的な表現ではなく、「価格の変動」や「調達困難」といった現実に即した文言に改めることで、実務で機能する条項となります。さらに一歩進めて、価格変動の基準や計算方法を明確にした「スライド条項」を導入すれば、より説得力のある交渉が可能になります。
スライド条項について参考 国土交通省の資料
https://www.mlit.go.jp/tec/content/001577470.pdf
加えて、実務上有効なのが自社が保障を超える部分を施主と分担する仕組みをあらかじめ示しておくことで、対立を避けながら合意形成を図ることができます。
一方で、すでに契約済みの案件については、後から一方的に価格を変更することは極めて困難です。判例上も、相当なインフレが発生しない限り「事情変更の法理」は認められにくく、実務的には合意書の締結による対応が唯一の現実解となります。












