かわらばん VOL5 イラン情勢のこの先3か月どうするか? 東京中小企業家同友会
東京中小企業家同友会 かわらばん VOL5
今回の資材不足について中小企業の視点で捉えると、もはや一時的な混乱にとどまらず、短期間で深刻化し、構造的な問題へ移行する可能性が高まっている局面に入っていると考えられます。「価格が上がる」という段階から、「必要な資材が入手しにくくなる」という状況へと変化しつつある点であり、現実的なリスクとして備える必要が出てきています。
2026年2月から4月にかけての報道や現場の声を総合すると、資材調達をめぐる状況には変化の兆しが見られます。2月時点では、中東情勢の影響などを背景に原材料価格の上昇や一部の調達難が指摘されていましたが、全体としては「価格は高いが入手は可能」という状況が多く見られました。しかし3月に入ると、供給制約や納期遅延に関する指摘が増え、調達そのものが経営課題として認識されるケースが目立つようになってきました。さらに4月にかけては、「納期未定」や「現場に届かない」といった声が散見されるなど、供給の不安定さに対する懸念が一段と強まっているとみられます。こうした動きから、資材不足が重要な経営課題として広く認識されつつある状況がうかがえます。
この背景には、地政学リスクの高まりによる原材料供給の不安定化に加え、従来の「価格問題」から「物理的な供給制約」への移行という構造的な変化があります。また、その影響は建設業や製造業にとどまらず、医療分野などを含め、業界を横断して広がりつつある点も特徴的です。
今後の見通しについてはトランプ政権下で「属人的な要素が強いため」不確実性が高いものの、いくつかのシナリオが想定されます。短期的には、4月後半から5月にかけて在庫の放出や物流調整によって、一部で持ち直しの動きが見られる可能性があります。ただし現場レベルではすでに納期未定や受注制限が発生していることから、実態としての改善は限定的にとどまる可能性も否定できません。(イランじょせ性が短期間で改善する可能性もゼロではありません。)
今回はあえてリスクの高いほうへ事態が進展した場合について論じます。
その先の展開としては、入手困難な資材が増加し、代替材への需要集中によって新たな不足が生じるといった連鎖的な影響も想定されます。その結果、見積条件の不確実性が高まり、従来のような前提での受注判断が難しくなる局面に入る可能性があります。状況によっては、資材不足が一過性ではなく、一定期間継続する前提での経営判断が求められることも考えられます。
業界別に見ると、特に影響が大きいと考えられるのは建設業です。資材は規格や安全基準に強く制約されるため代替が難しく、一部の資材が欠けるだけで工程全体に影響が及びやすい構造にあります。また固定価格契約が多いことから、資材不足や価格変動がそのまま収益を圧迫するリスクにつながります。このため「受注はあるが完工できない」といった事態が発生する可能性も指摘されています。製造業においては、設計変更や代替調達の余地がある分、完全停止には至りにくいものの、生産効率の低下やリードタイムの長期化といった形で経営への影響が現れると考えられます。医療分野については優先供給が行われるケースも多く、直ちに停止に至るリスクは相対的に低いとみられますが、手袋や包装材などの消耗品不足が徐々に影響し、現場の余裕が削られていく可能性があります。
こうした環境下において、中小企業には従来とは異なる対応が求められます。まず調達面では、単一の仕入先に依存するのではなく、複数ルートからの確保を前提とした体制づくりが重要になります。同一資材について複数の調達先を確保する、あるいは代替材の活用をあらかじめ検討しておくことが、リスク分散につながります。契約面においても、固定条件に過度に依存するのではなく、価格スライド条項や納期に関する免責条件を適切に設定し、見積の有効期間を短縮するなど、柔軟性を持たせた設計が求められます。
また在庫に対する考え方の見直しも重要です。これまでの在庫削減志向に加え、事業継続に不可欠な資材については優先順位を明確にしたうえで戦略的に確保する必要があります。在庫は単なるコストではなく、供給が不安定な局面においては事業を支える重要な資産として機能します。さらに、顧客対応の面では、納期や供給状況の不確実性について事前に説明し、継続的に情報共有を行うことが信頼維持の観点から不可欠です。後手に回るほど関係性への影響は大きくなるため、先手の情報開示がこれまで以上に重要になると考えられます。
以上のように、資材不足は単なる価格問題を超え、経営の前提そのものに影響を与えつつあります。不確実性の高い状況ではありますが、現実を冷静に見極め、柔軟かつ多面的な対応を進めることが、中小企業の持続的な経営にとって重要な鍵となります。












