従業員の家族や 近隣の方が入社するような会社を目指す
森本 勝好 氏
森本鐵鋼産業株式会社
代表取締役社長
森本 勝好 氏(板橋支部)
【会社概要】
住 所 東京都板橋区小茂根2 – 22 – 10
創 業 昭和 35 年 4月 1 日
(設立 昭和44 年 3 月 13 日)
事業概要 製鋼原料・非鉄金属原料のリサイクル事業(加工・売買)
産業廃棄物中間処理業、産業廃棄物収集運搬業、計量証明事業
従業員 19 名
U R L https://mori-tetsu.co.jp/wordpress/
製鋼原料・非鉄金属原料のリサイクル事業を行う森本鐵鋼産業株式会社は昭和35年、親族により森本商店(板橋区栄町)として創業。昭和44年に法人化がなされ、現在の環状七号線沿いに構えることとなった。
インタビューを終え、誌面写真撮影のため日差しのやわらぐ裏手へ案内をいただく。周りには住居があり、また隔てる高い囲い塀もない。しばし雑談。「幸いご近所の理解もあり、塀も立てていません。陽が入ることは生活で大切ですからね」と森本勝好氏。「環境問題への関心の高まりもあって、地域から
は当社の事業を継続してもらいたいという声もいただいています。近隣の方が入社するような会社を目指してるので」と微笑む。事実、高校のインターン生や近隣の住民方の入社によって同社がある。ひと通りの会話を終え、失礼させていただこうと思った瞬間、森本氏が「どちらからいらしたのですか。小竹向原の駅ですか」と、すっと言葉を添えてくれた。
“添える”という言葉は不思議なものだ。たとえば、なにかをぽっと付け加える行為ではないだろう。相手を尊重しながら、本人の身体性をも重ねる行為なのだ。社員との学び合いを森本氏はこう述べた。「減点主義ではうまくいかないと分かりまし。加点主義で臨まないと」。インタビューの前には、社員の方に現場案内と解説をいただき、そして作業をされている方々と休憩所で話を伺った。みなさん、自分の言葉で話されているのが印象的であった。
実は、この会社づくりは森本氏にとっても想定外のことであった。氏はサラリーマンとして出世街道を邁進しており、父君が牽引していた同社を思いがけず事業承継することになったのだ。「もともとは伯父が創業した事業ですが、父も手伝い、代表もしていました。父はいわゆるワンマン社長でした」と振り返る。「私は私で住宅建材製品メーカーに勤めていまして、そこで生きていこうと考えていました。すると、ある日、父の部下から呼び出され、所管行政へ向かうことに」。社外取締役でもあった森本氏はその責任から対応を行い、当座のプラン概要も組み立てた。後日、社員や取引先の意見として家業に入ってほしいとの要請を受けた。そして環境が整い、2018 年5月に代表取締役社長に就任を果たすこととなった。東京同友会への入会も同年。現在は板橋支部長を務める。
「小さい頃から工場に出入りしていましたし、見知った顔が社内にいたこと、そして社員が前向きに受け入れてくれたことは有難かったですね」と手元をみつめる。併せて、地域行政各所からも事業を続けてもらいたいという要望も受けた。“従業員の家族や近隣の方が入社するような会社を目指す”という森本氏の想いの原点である。
次いで氏が傾けたことは、社員に仕事への自信をもってもらうことであった。どのようにか。「モノの解体って、すごくおもしろいんですよ。つくるときには設計図ってありますよね。でも、解体の設計図はないんです。素晴らしい会社は、解体されることも気にしているんですね。僕らはそれが現場でわかるんです」。氏のこの言葉からも察することができるだろう。
加点主義で社員に寄り添い、時には厳しく指導もする。同社の入社を希望していたとある人物がおり、彼を他社へ修行に預けた。2年後、その人物が森本氏のもとに挨拶をしにきた。修行を終え、見違えたその姿をみて氏は嬉しく感じた。そして徐々に現場を任せ、自身でつかんでいった役職に彼は現在いる。工場長である。「見ていて、本当によくやっています。よくいうんです。
SDGs っていう言葉が最近あるけど、あれはお前がずっとやってきたことなんだよ」って。
氏によると共にモノゴトを成す観点は3つあると言う。できる、できないを見極めること。やりたいと思ってもらうこと。やらざるを得ない環境に身を置くこと。そして「型を知ることは大切です。形なしになってはもったいない」と加える。現場が現場に集中するための知恵であり、一方で、相手に合せて添う姿勢も体現する。
同社は高校インターン生も受け入れており、それは現場体験のみにとどまらない。「ビジネスマナーに加え、生産管理の原理・原則も伝えます」。同社は金属資源の輸出も行っているので、コーヒー豆を用いて話題を広げる。コーヒー豆がどこで作られ、どのように取引(フェアトレードや為替)がされるのか。そして店舗ではどのように煎られ、原価率がどのようになるかまでを体験してもらう。ちなみにこのノウハウは社内発のコーヒー事業として取り組まれるに至っている。
和装で過ごし、陶芸が趣味であるという森本氏。「文学・美術系に興味があったんです。でも、一族が建築系なので学業もそちらに。流されましたね」と笑う。「ただ、社会に出てからも結局、学び直しをすることになりました。積み重ねることは大切です。学生なら学業を、社会人でも学びは現場を通してでもできる。みんなが、それぞれのもとにいつかくるビッグウェーブをつかんでほしい」と静かに熱い言葉を添えてくれた。












