【調査報告】業況改善への期待「0.0%」の衝撃
――経営指針が分ける企業の明暗と、2030年への戦略的解像度
東京中小企業家同友会では、2025年10月から11月にかけて、会員企業233社を対象に「会員企業実態調査」を実施しました。今回の調査結果は、「経営指針(経営理念・計画)の有無」が、不透明な外部環境下での将来展望を決定づけるという、極めて冷徹な現実を浮き彫りにしています。
詳細は下記リンクよりダウンロードいただけます。
1. 経営指針の浸透度が「改善期待」を左右する
調査において最も象徴的なデータは、経営指針の策定状況と業況見通しの強い相関です。
• 経営指針を策定し、社内のマネジメントサイクルに落とし込んでいる企業では、今後の業況が「良くなる」と答えた割合が52.5%に達しました。
• 一方で、指針が無い層における改善期待は、驚くべきことに0.0%という結果になりました。
• この層の53.8%が業況の「悪化」を懸念しており、指針(航路図)を持たない経営がいかに将来への展望を奪ってしまうかを物語っています。
2. 「属人性の壁」に阻まれる個人事業者の限界
個人事業者(ひとり法人含む)の経営実態についても、深刻な構造的課題が可視化されました。
• 個人事業者の64.10%が「自身の能力・スキルを活かした独自サービス」を強みとしています。
• しかし、その裏返しとして経営課題の第2位に「時間管理(19.1%)」が浮上しており、自分が動かなければ売上が上がらないモデルが、事業の拡張(スケールアウト)を物理的に不可能にしています。
• 中期的に予測される「供給制約(人手不足)」に対応するには、属人性を排した「業務の標準化・省人化」が不可欠ですが、この層のデジタル化への意欲は8.5%と低く、戦略の実行に遅れが見られます。
3. 「直感」から「客観的データ」による経営への転換
新規事業の判断根拠においても、規模や成熟度による差が顕著です。
• 従業員50名以下の企業では、判断根拠を「経営者の直感や経験(41.2%)」に頼る割合が、客観的な「市場調査(24.7%)」を大きく上回っています。
• これに対し、指針が浸透している企業では50.0%が「市場調査の結果」を重視しており、外部環境の変化を変数として捉える「解像度の高い経営」を実践しています。
4. 2030年に向けた「供給体制の適正化」とAI活用
今後5年の日本産業は、人手不足に伴う「供給制約」と「インフレ圧力」の常態化が予測されています。
• 今回の調査では、50.6%の企業が生成AIを「大きな機会」と認識しています。
• 主な導入分野は「業務効率化(40.3%)」が最多であり、これは労働供給制約に対応するための「省人化・省力化投資」となってます。
5. 政策提言:経営成熟度に応じた支援の多層化
本調査結果を踏まえ、中小企業支援の在り方は一律ではない「多層的な支援」と小規模・個人事業者に対するプッシュ型伴走支援の充実など政策提言に反映してまいります。
• 戦略的成熟度の高い企業: デジタル技術活用やビジネス領域拡張を円滑に進めるための、資金繰りと連動した制度活用支援。
• 小規模・個人事業者: 属人性の壁を乗り越え、経営の方向性を定めるための「プッシュ型伴走支援」や「要件型給付」の拡充。
• 労働供給制約への対応: 「130万円の壁」の撤廃(要望35.6%)など、労働参加を促すための抜本的な制度見直し。
——————————————————————————–
【まとめ】
経営指針は、変化の荒波を突破する唯一の武器
今回の調査で浮き彫りになったのは、客観的なデータに基づき、自社の「勝ち筋」を経営指針として言語化することの重要性です。東京同友会は、経営課題の解像度を高め、不確実な未来を具体的かつ計画的に描くための「学びと実践の場」を、これからも中小企業家に提供し続けます。
——————————————————————————–
調査概要
• 回答数: 233件(東京同友会会員)
• 調査期間: 2025年10月1日~11月3日
• 集計方法: インターネット形式による自動集計
• 文責: 東京中小企業家同友会 事務局 政策渉外部












