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経営者Q&A

自己都合と会社都合─離職理由の功罪(2000年8月)

Q

3カ月の試用期間を定めて雇った社員ですが、お客とのトラブルが多く、何度も注意しましたがいっこうに改まりません。それで、よくお話をして退職を勧めました。  その際、本人が自己都合にしてほしいと懇願しましたので、そのように離職票には記載しました。ところが、突然、職安からその退職の事情について聞きたいとの電話が入り、困惑しています。

A

お話では、温度差はあると思いますが、退職そのものについては争いはないようです。貴社の方としては、社員の方にとって不名誉な解雇よりはむしろ、解雇に近い事業主勧奨にして、自己都合退職としての道を選択したのでしょう。  ところが、退職の社員が職安へ離職票を提出した段階で、窓口に「自己都合退職だと失業給付は3カ月の給付制限を受けますよ」と言われ、「実は辞めろと勧められた」と話したんだと思います。会社都合の退職の場合なら、7日間の待機期間のみで基本手当を受けられるのに、自己都合のままでは7日間の待機の後、給付制限を受けることがわかったのでしょう。そこで職安から事実確認の電話が入ったものとみえます。

■助成金受給に支障も…  
社員の希望(会社都合に訂正)どおりにしてあげるのは貴社の善意でしょうが、必ずしもそれがよいとは限りません。今度は会社に関わる問題が発生するからです。  貴社が雇用保険関係の各種助成金を受けていたり、これから申請の手続きを開始しようとする場合には困ったことがおきます。  つまり各種助成金の受給をするには当該職場で前後6カ月間に会社都合による退職者(解雇、事業主勧奨等)を出していないことが条件だからです。さらに、受給の途中であれば既受給分の返還請求が発生します。そういう意味では貴社にとっては自己都合退職の選択の方が得策かもしれませんね。  
なお来年4月からは基本手当の給付日数に離職理由による差が設けられ、自己都合退職では受けられる日数が減ることになっています。

■自己都合は退職届けを  
以上の諸点を熟慮して、訂正の場合ならば離職票の補正願いを、訂正できないのなら事業主名による経過書を職安に提出してみてください。  
いずれにせよ、離職理由は事実に基づいて正確に記入しましょう。また、社員とのトラブルを避ける意味でも自己都合退職では本人から文書による退職届けをもらいましょう。

DDK専務理事 経営コンサルタント 石田 仁(豊島支部)
TEL 03-3980-8298

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