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経営者Q&A

銀行の競売申し立てに打つ手は-特定調停制度について-(2001年5月)

Q

ここ数ヶ月、業績落ち込みで銀行支払いができなかったら工場の競売申し立てをされてしまいました。あと2~カ月もすれば新規の仕事の入金があり支払再開できるというのに、聞く耳もたずです。
今工場を競売されればこの仕事もダメになってしまいます。何か打つ手はないでしょうか。

A

昨年中小企業を救うためと称して民事再生法が発足しましたが、「そごう」などの大企業が便利に使って、中小企業には予納金が高いとか保証債務が動き出すとかで、とても使えないものとなっています。

ところでご質問のような場合、一時的に競売を停止し弁済方法について協議する機会がつくれればいいので、会社全体の再建を目的とする民事再生法を申し立てなくとも、やはり昨年新設された特定調停というものの申し立てで対処することが十分できると思います。

これは債務弁済の一般民事調停について特則を設けたもので、抵当権による競売だけでなく判決にもとづく強制執行としての競売も停止できるのです。しかも普通は競売停止には保証金を積まされるのですが、事情によっては無保証でも停止してよいこととされているのです。

普通は裁判より調停がランクが下だとされているので、調停のために裁判の判決を止めることはできないという理屈なのですが、この特定調停の場合だけは特別扱いというわけです。

Q

どのような場合に申し立てることができるのですか。

A

申し立てができるのは次のような人と法人です。
1)支払い不能に陥るおそれのある個人または法人。
2)事業の継続に支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することが困難な個人または法人。
3)債務超過に陥るおそれのある法人。

要するに現実に不渡りを出していなくとも、取引停止を受けていなくとも、おそれだけで申し立てできるのです。またこれはもともとが調停の申し立てですから、官報に公告されることもなく、期限の利益喪失の理由ともされません。全債権者を相手とする必要もなく、支払い困難な相手だけを被申立人とすればよいのです。

Q

メリットがあるからには当然デメリットもあるのではないかと思いますが、いかがですか。

A

デメリットと言うほどのことではないのですが、一般の債務弁済調停の申し立てに比べ、会社の全経営状態や全資産状態を裁判所に明らかにしなければならないことです。また、第一回の調停期日までに相当しっかりした根拠のある弁済計画案を作成しておかなければなりません。

新規取引での収入の見込みなどについては、単なる見込みでなく、具体的契約書、信用のある手形などを提示しての支払計画、あるいは不動産売却による弁済予定であれば、具体的な売却予定と価格などを明らかにする必要があります。

競売停止の決定後2~3カ月経過してもなお、これらが明確化できなければ、特定調停申し立て自体が却下され、競売停止も解除されます。

原口法律事務所 原田 紘一(三多摩支部)
TEL 03-3361-9633

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