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経営者Q&A

中小企業のM&A(2022年11月)

Q

最近テレビでコマーシャルしているM&Aの会社から電話があり「御社も検討されてみてはいかがですか。」とのことなので、応じてみようと思うのですが、いかがでしょうか。

A

えっ?!社長は自分の会社を売るつもりなんですか。

Q

いえ、そんな気はないんですが、私もそろそろ承継のことは考えておいたほうがいいかなあ、と思っていたところ、「御社の価値を客観的に把握しておかれるためにもいかがですか。」と言うものですから、一度受けてみようかと思ったのですが。

A

その程度のことでしたら、方法はほかにもありますよ。M&Aとなると、ずいぶん大変な話になりますよ。

Q

はあ、どんなことになるんでしょうか。

A

まず会社の中身を全部そのM&A会社(ファイナンシャル・アドバイザー、以下、FAと言います。)に開示しなければなりません。
これは通常の表の姿だけでなく裏側の普通は人に言いたくないことも全部開示を求められます。そのため、まずしっかりした秘密保持契約書を作らなくてはなりません。
そして、買い受け希望会社の紹介を受けます。
それから、企業価値についての専門的な調査をされます。法律的な面、資産・財務的な面、従業員構成、取扱い業務の内容、取引先の堅実性、そして必要に応じ知的財産関係、隠れた債務がないかどうか、などといった、たいへん突っ込んだ調査内容となるのです。この調査をしなければ会社の価値はわからないのです。

Q

すると、費用もかなりかかることになるのでしょうね。

A

そうです。秘密保持契約書の作成料、FAへの手数料や紹介料、調査をするそれぞれの弁護士や公認会計士、弁理士などへの手数料などです。
これは先払いですから、M&Aが成立しなくても帰ってはきません。
それぞれ数十万円から100万円を超すものと考えられます。したがって、トータルではかなりの金額になります。

そして、なによりの問題点は、御社のような社長が一代で築き上げてこられて、大手の下請けではない独立系の企業の場合、上記のような調査では本当の価値などとてもわかるものではないと言うことです。
社長個人の人間性によって形成されてきた取引先であり、会社の組織であり、そしてそれぞれの社員たちですから、それらの価値はFA業者や専門家などにはとうていわかるものではありません。

そして、最後に最も慎重に考えなければならないのは、そのような調査が入ることにより、社員が不安になることです。そして、この話が取引先へ漏れるようなことがありますと重大な信用の問題が発生します。
したがって、これはそのような軽い気持で受けられるような話ではありません。よほど腹をくくって十分慎重にお考えになった上で対応されることをお勧めします。

原口 紘一(三多摩支部)
原口法律事務所
弁護士
TEL:03-3361-9633
FAX:03-3369-6664
HP:http://haraguchi-lawoffice.jp
e-mail: haragchi@f7.dion.ne.jp

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