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経営者Q&A

開発志向の中小企業と知財(2022年6月)

Q

中小企業家しんぶんに黒瀬さんが連載している戦後中小企業史に、減速経済下で出現した製品の高加工度化、多品種少量生産に対応した、4タイプの開発志向型の中小企業として、(1)大企業の提示した仕様をもとに提案する「開発補完型」、(2)独創的な加工技術に基づく「専門加工業型」、(3)受託開発の性格が強い「製品開発型」、(4)創造的な製品を生み出す「ベンチャー・ビジネス」が分類されています。知財の扱いに注意はありますか。

A

1.開発補完タイプ
このタイプでは、品質、製造効率性などで特許を検討します。
納品先の大企業に権利を直接行使することは難しいです。大企業が2社購買をするとき、価格差や数量で特許が評価されます。競合納品社を特許で牽制することができます。
試作受託企業は、広い権利範囲の共同特許では次の受託に差し支えるので、権利範囲を試作品に限定、あるいは、特許の使用に関する契約を検討しましょう。

 

2.専門加工業タイプ
このタイプは、保有する特有の技術を他社は簡単にまねできませんが、依頼者の海外展開などに伴って流出する可能性があります。キーパーツの事前特許化や基本技術を国内使用に限定などの方策もありますが、流出は時間の問題です。技術を磨いてリードを保つ方策を検討しましょう。

 

3.製品開発(受託生産)タイプ
市場規模の小さい産業機械や日用消費財の開発を行う企業と位置付けられており、プライベートブランドなどに対応するファブレスの受託生産を行うなどの形態があります。提案請負型の中小企業が自前の特許を持てば、1 社専属にならずに、他社への売り込みも可能なる交渉力に繋がります。受託生産で力をつけた台湾のコンピュータ組み立てのように。

4.ベンチャー・ビジネスタイプ
研究開発要員が多く創造的な製品を生み出している企業と位置付けられています。
特許は、独創性のある製品に対する他社参入の抑制に有効です。特許を担保にした開発資金調達、共同開発の種などに活用できます。例えば、藻からオイルを抽出するユーグレナのように。
ビジョンを踏まえて自社ブランドを意識した商標を取得、模倣品対策として意匠権も効果的です。

5.どのタイプも、自社のブランドが基本で、ビジョンに沿った、知財の取得、活用を検討しましょう。
(1)特許制度は、独占よりは、特許で、他社の参入を押さえている間に、先に進める時間的余裕と資金得ることができる制度との理解が現実的です。
(2)商標は、永続的で使い込むと付加価値が増大します。長寿のお菓子やお酒の名前のようにブランドは信用力、顧客誘引の印です。商標、意匠は模倣品対策に有効です。
(3)知財のアドバイザーとして、開発段階の秘密も相談できる相性の良い弁理士を利用しましょう。その経験の深い弁理士は、既に競合他社を担当しています。包餡機機で有名なレオン社は農薬が、バイオ企業である林原は農業機械が専門の弁理士でした。

長谷部善太郎(千代田支部)
お茶の水内外特許事務所
弁理士
TEL:03-6268-8575
HP: http://www.ochapat.jp
e-mail: zhasebe@ochapat.jp

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