普段は話題にならない「種」について、 騒がしいですが、種の問題を考えてみましょう。(2021年1月)
1. 自家採種ができない、種苗法改正?
自家採種とは、皆さんが庭で咲いたアサガオやヒマワリの種を次の年に蒔くために採種するのが例です。改正種苗法では登録品種について、自家採種が原則禁止となりました。
ただし、収穫物の譲渡や販売を行わない自家消費目的の家庭菜園や趣味としての利用に影響はありませんが、他人に譲渡することは気をつけましょう。
日本で開発されたシャインマスカットなどの種苗が外国へ無断で流出してしまうことがあって、このようなことがないように、新品種の管理を強化する目的で、種苗法の改正が行われました。日本の農産物を輸出して、日本の農業の振興に役立てようとするものです。趣味の園芸であっても、むやみに分けるのは注意が必要です。
2. 近頃は、去年と同じ花が咲かない?
花や野菜の種は、一代雑種(F1品種、firstfilial hybrid)という、掛け合わせた種が多いです。それから採った種からは、同じ花が咲きません。F1種は、親よりも優れた性質(耐病性、収量など)を発揮するなど優れていることと、種苗会社の都合もあります。
販売する農家では、収穫物の質、量の観点から種を新しくするのが普通になっています。イチゴや芋などでも、ウイルス感染などして劣化する危険から更新されます。
3. 固有品種について
在来種は、栽培を限定して機縁種との交配から守る必要がありますし、F1品種を作る元品種としても大切です。引越ししたときなどは気をつけましょう。
4. 農家の栽培について
販売目的の農家では、品質や耐病性などの観点から、毎回種を更新するのが一般化しています。
イチゴなどは、元苗を購入してその年の分を元苗から分割することが前提になっています。国公試験場からは、接ぎ木を前提に果樹の種苗が供給されることが多いですが、改正種苗法下では、十分に種苗を供給できる体制の整備も考えて、再検討されると思います。
5. 販売について
イチゴ、ミカン、ブドウ、リンゴ、お米など豊富な品種が店頭を飾っているので、農産物のブランド化を肌で感じます。高齢化に伴い、農業は企業化する傾向にあり、質量額の確保と販売ルート(加工用、業務用、消費者用)に適した品種が選択されています。
基本となる種苗、地域特産物をしめすGI(地理的表示)、生産者を示す地域団体商標、機能性食品、JAS、有機栽培などを使ってブランド表示が進むと思われます。
今後ますます、競い合って提供される、豊かで、特徴のある農産物が期待できます。
ぜひ、味わってください。
長谷部善太郎(千代田支部)
お茶の水内外特許事務所
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