タイトルアイコン

経営者Q&A

一時的な在宅勤務と時間外労働(2020年11月)

Q

コロナ禍で在宅勤務者がいます。仕事場以外に労働条件の変更はありませんが、時間外はしないように約束しました(36協定は締結、届出済み)。1 ヶ月後、在宅勤務者から時間外手当を支払って欲しいと言われ困っています。どのように考えればよいでしょうか。

A

認めない合意をしても、時間外を黙認している実態があれば支払い義務はあります。会社には適正な労働時間の把握義務があり、実態を把握し、何らかの措置を講ずることになります。原則は会社が現認・確認、または電子機器等で客観的に記録することも方法ですが、やむを得ず社員に自主申告させるのも一つです。

在宅勤務の時間管理に合っている仕組みとして、外勤の営業マン等の時間管理に適用される事業場外みなし労働時間制があります。外勤で労働時間を算定しがたい場合に、原則、所定労働時間働いたとみなします。あるいは当該業務を遂行するために、通常所定労働時間を超えて労働が必要な場合は、その業務に通常必要とされる時間、労使協定が締結されている場合は当該協定で定めた時間を労働したものとみなす制度です(労基法第38 条の2、通達は使用者の指揮監督が及ぶ場合は厳格)。就業規則等に明示してあれば貴社は所定労働時間が8 時間ですから、事案のように、時間外を認めず、実際の勤務時間にかかわらず「所定労働時間働いた」とみなすことができます。ただ、時間外が常態の社員には納得できません。また、勤務実態から、当該業務に通常必要とされる時間として、毎日1 時間程度の時間外が必要ならば「通常必要とされる9時間働いた」とみなす協定を結ぶこともできます。結局、9時間の通常みなしならば、1 時間の時間外勤務が毎日オンされます。

現在、デジタル機器を使えば、労働時間は容易に把握できますが、社員側の労働密度が濃くなり、かえって生産性が落ちることも指摘されています。ガイドラインでは、テレワーク(在宅勤務等)で、事業外みなし労働が認められるためには「使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難」である必要があり、次の要件を満たすことを求めています。①情報通信機器が使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと。例えば、使用者からの具体的な指示に備えて待機しつつ実作業を行っている、または手待ち状態で待機している状態にはないことです。二つ目は②随時、使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないことです(厚労省「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」2018.2 参照)。現行の指針では、テレワークで事業場外みなしの成立する場合を、会社の細かい指示がなく、自分の裁量で仕事をし、時間管理も任されているような場合としていますが、今後、見直しも想定されていますから留意が必要です。

一時的な在宅勤務なら、時間の管理は自主申告をお奨めします。その上で、業務の態様をみて、事業場外のみなし勤務制の導入も一考しましょう。

石田 仁(豊島支部)
協同組合 DDK
経営労務コンサルタント・社会保険労務士
(協同組合ディーディーケー 専務理事)
TEL : 03-3980-8298
FAX:03-3980-8380
HP: http://www.ddk.or.jp
e-mail: ishida@ddk.or.jp

戻るボタン
経営を磨きたい 経営の相談をしたい 交流したい 人を採用したい