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経営者Q&A

反社会的勢力への対応(2019年12月)

Q

「反社会的勢力」との関係遮断について、実務上の留意点を教えてください。

A

1 政府指針(企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針)
「反社会的勢力」とは、「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団または個人」と定義された上で、判断基準として「暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等といった属性要件に着目するとともに、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件にも着目することが重要である。」とされています。

2 属性要件
一見して明白な場合は非常に少ないため、相手方の周辺事情を基礎として総合的な判断を行います。例えば、登記簿上、相手方の商号や本店所在地が不自然に複数回変更されていたり、不自然な業務が事業目的として挙げられている場合などがあります。

3 行為要件
どのような行為によって線引きするのか悩ましい点もありますが、相手方の交渉態度の全体を見て、要求行為の方法や内容を総合的に判断するべきです。
たとえば、金融庁は「銀行業であれば、威迫等により他の一般的な顧客より低い金利での貸出を要求する」ことを一例に挙げています。

4 実務における対応
政府指針による判断基準に従って判断し、該当する者を排除していけば、企業として最低限のなすべきことは行っていると言えます。ただ、明白に反社会的勢力と判断することのできない、いわゆるグレーゾーンに位置する周辺者についても、レピュテーションリスクを重視して広く関係排除の対象とするべきでしょう。
具体的には、「共生者」(暴力団に利益を供与することにより、暴力団の威力、情報力、資金力等を利用し自らの利益拡大を図る者)や「暴力団員と社会的に非難されるべき関係にある者」と呼ばれる者です。前者は、暴力団の資金を証券市場で運用して報酬を得るトレーダー、犯罪行為によって獲得された資金のマネーロンダリングに協力する業者等が典型です。後者は、暴力団員やその家族に関する行事(結婚式、還暦祝い、ゴルフコンペ等)に出席したり、暴力団員と密接な関係を有していると認められる者をいいます。
同様に、「集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行っている」集団として「準暴力団」(いわゆる半グレ)も挙げられます。準暴力団は、組織性が弱いですが、反社会的な活動に親和性があることは間違いなく、CSRの観点から関係を有することは許されないというべきでしょう。

5 参考条項例
各業界団体に暴力団排除条項の参考例がありますが、特に「銀行取引約定書に盛り込む暴力団排除条項参考例」は広く流用されており、参考になるものと思います。

岩﨑 孝太郎(千代田支部)

首都東京法律事務所
弁護士

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E-mail : iwasaki@tmlf.jp

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