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経営者Q&A

企業外の非行行為に対して懲戒処分が及ぶ範囲(2016年12月)

Q

会社の管理職の立場にある者が、スーパー で万引き行為を行ったことが同店より通 報されました。懲戒解雇処分とすべきと 考えていますがどうでしょうか?

A
【懲戒処分は企業秩序を維持する範囲内で 有する権限】 
  就業規則で定める懲戒規定の意味は、企業 が事業活動を円滑に展開するために必要な範囲 で、企業秩序を維持する権限として存在するも のです。したがって、企業の施設外で就業時間 外に行われた従業員の私生活上の非行行為は、 企業秩序維持とは直接的には関係のないことで あり、原則として懲戒できません。
 多くの会社の就業規則では、懲戒事由の1つ に、「刑法に触れる犯罪行為を行ったとき」と いうような規定があります。会社内で暴行など 「刑法に触れる行為」を行った場合はもちろん 懲戒処分対象となりますが、企業外の非行行為 については、国家(警察など)とその行為者と の間で処理され刑事罰等を受けることになるの であり、会社と従業員との関係では企業秩序は 何ら乱されておらず懲戒処分の対象とはならな いのです。
 横浜ゴム事件というのがあります。事件は、 午後11時20分ころに他人の居宅に故なく入 り込み(酩酊状態で風呂の扉を開けたところを 住人に誰 すいか 何され逃走し、警察に捕まった)住居 侵入罪として処罰されました。会社は従業員を 懲戒解雇しました。最高裁(昭和45.7.28)は、 ①私生活の範囲内で行われたものであること、
②罰金が2,500円程度にとどまったこと、③職 務上の地位も工員という指導的なものでないこ とから、「会社の体面を著しく汚した」との懲 戒解雇事由に当たらないとし、懲戒解雇を無効 と判断しました。
【私生活上の行為であっても懲戒できる場合 とは】
 しかし、従業員の私生活上の非行行為であっ ても、懲戒の対象となる場合があります。
 バス運転手が企業外で酒酔い運転及び暴行 によって罰金刑に処せられたことを理由として 懲戒解雇したことが適法とされたケース、鉄道 会社の従業員が電車内で痴漢行為を行った場合 に懲戒解雇が有効とされたケースなどがありま す。
 私生活上の行為であっても、その内容と同時 に、会社の事業の種類や規模、経済界に占める 地位、経営方針及びその従業員の会社における 地位・職種等の事情から総合的に判断して、会 社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大で あると客観的に評価される場合は懲戒処分が有 効とされています。こうしたときは企業には、 従業員を懲戒し、企業秩序を回復させる必要が あると判断されているようです。  ご相談のケースの場合も、スーパー側がどの ような解決を望んでいるのか、従業員の管理 職という立場なども考慮しなければならないで しょう。また、処分する場合も懲戒解雇以外の 軽い処分で済ませる、自主的退職扱いとするな ど選択肢はいくつかあると思います。

鎌田 勝典(中央区支部)
社会保険労務士法人オフィス・サポート

TEL.03-6280-3925
E-mail : k.kmt@officesup.com
HP :  http://www.officesup.com

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