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経営者Q&A

発達障害が疑われる社員と 家族への対処について(2016年6月)

Q

入社して1年半の職員が、発達障害が疑われ、職場でのトラブルも生まれ始めています。医師から「サービス業には向いていない、適性に合った配置転換を考えてください」と言われています。

A
本人の自覚と家族の理解が前提
 就職してはじめて発達障害が問題になるケースが多いようです。大学は学生を配慮する対象として見る場であるのに比して、会社という場は利益を出すことに主眼がありますから、「お客さん」という立場からの脱却を迫られるためでしょう。
 どのような仕事に向いているかは人それぞれ異なるため、なるべく得意な能力が生かせ、かつ苦手なことが目立たないような仕事に就けるよう支援していくことが大事です。例えば、ADHD(注意欠陥・多動性障害)の人は精密機械の工場で勤務するのは難しい、自閉症スペクトラムの人には営業は向いていないと言われています。
 そうした特性をまず本人が自覚することが大事です。発達障害の方が社会人として生活するための必要なスキルとは、①「自律スキル」(自分でやれること、やれないことを判断する力)と、
②「ソーシャル・スキル」(他者に相談し、他者からの指摘や助言に耳を傾ける力)といわれています。それらのスキルを身に付ける第一歩が自己の特性の自覚となります。また、ご家族もよく理解してあげないと、なにかサボっているように見えて、「もっと頑張れ」などという不適切なアドバイスを行ってしまうことがあります。最も避けたいのは、発達障害の自覚も理解もないまま職場でトラブルが多発し、その結果、うつ病などの二次的な障害になってしまうことです。
発達障害に対する様々な支援制度の活用
 発達障害に対してきちんと職場で理解が得られており、十分な力を発揮できている場合はいいのですが、往々にして職場でトラブルとなってしまうケースが多いものです。医学的な治療(カウンセリングや薬物療法を含む)を優先しなければならないときには医師の指導に従うことが前提となります。そうした前提を踏まえた上で、各行政にも、発達障害支援センター、就労支援機関など様々な支援制度があり、民間でも取り組みが進んでいますので活用を検討してください。
退職・転職かの判断を慎重に
 発達障害を理由に安易に解雇しようとすると、本人ならびにご家族と会社との間でトラブルになり、会社側が安全配慮義務を果たしていないとされてしまう場合があります。したがって、まず基本は治療やさまざまな医学的支援の検討、行政の支援システムの紹介などの努力を行わなければなりません。
 本人の判断やご家族との相談の中で、退職という結論になった場合でも、転職する場合のアドバイス、支援も最大限に行うようにしてください。

鎌田 勝典(中央区支部)
社会保険労務士法人 オフィス・サポート

TEL.03-6280-3925
E-mail : k.kmt@officesup.com
URL :  http://www.officesup.com

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