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経営者Q&A

年度末にパートの年休取得が集中、 生産に支障が!(2014年10月)

Q

工場を経営しています。今季、パート( 社員20 人の7 割) の年休消化が年度末に集中し、生産に支障をきたしました。当社では、年休は4 月1 日付与で繰り越しを認めていませんが、年休を取っても皆勤手当は付けています。今後、事業に影響が出ない方法がありましたら教えて下さい。

A
年休取得が集中するのは、貴社が年休の繰り越しを認めてないからです。普段取ってないので、1 年限りで消滅するなら3 月中に取りたくなるのは当然です。皆勤手当が付くので、なおさらです。
 対策には、事業に影響が出るなら時期を変更してもらえば良いとの方法もありますが、年間を通して労使協定で年次有給休暇の計画取得を導入し、生産と休暇の調整をはかることの方が効果的でしょう( 労基法第39 条第4,5 項)
 その前に改善、検討しなくてはならない点があります。
 第一に年休を1 年限りとする措置は、問題があります。確かに、労基法第39 条では当年度に発生した年休が繰り越せるかどうかには明文はありませんが、通達は、年休の趣旨から使わなかったら繰り越されるものと考えています。ただ、実務では、労基法上の他の請求権と同じく2 年間で消滅時効にかかります( 労基法第39 条、115 条)。貴社が資力も乏しく代替要員も置けない事情から年休を貯めさせない方策を取る気持は分かりますが、改めて欲しいと思います。
 第二に、パートの欠勤防止、生産奨励の趣旨で皆勤手当を支給していますが、年度末に年休取得が集中し、事業に支障が出るなら、皆勤手当を削減し他の手当へ変更する方法も考えられます。この方法は、皆勤手当の趣旨や削減の程度により有効との判例もあります。他方、労基法は年休を取得したことによる賃金の減額その他の不利益な取り扱いをしないように訓示しており( 労基法附則第136 条)、通達もそのように指導しています。今後の対策としての削減や変更が、結果的にパートに不利益な賃金減額となる場合は、年休取得の抑制となり法の趣旨に反しお奨めできません。
 以上を前提に、年休の計画取得を工夫します。
 計画取得については、パートも含めた職場の過半数労働者の代表( または過半数組合) と労使協定を締結して、年休を付与する時期について定めることになります。方式は全員一斉でも個人別付与でもかまいませんが各人に5 日分の年休を残さなくてはなりません( 労基法第39条5 項)。
 安易に事業の正常な運営を妨げるからと、時期変更権を行使して年休を取らせないのは避けましょう。年度の初めに会社が計画取得を提案し、事業に支障をきたさないようパートの希望を聞きながら年休を計画的に取ってもらう方が得策です。

石田 仁(豊島支部)
経営コンサルタント
(協同組合DDK 専務理事)

TEL.03-3980-8298
E-mail : Ishida@ddk.or.jp
ホームページ :  http://www.ddk.or.jp

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