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経営者Q&A

有給休暇の時季変更権(2006年7月)

Q

先日、社員から「○月○日に有給休暇をください」との申し出を受けました。ところが、○月○日は当社にとって業務が多忙な時期に当たり、休まれてしまうと困るのです。有給休暇は必ず社員が請求した日に与えなければならないのでしょうか。

A

労働基準法の第39条には、有給休暇は社員が請求する日(時季)に与えなければならないと定められています。これを有給休暇の時季指定権といいます。
しかし、現実的には社員の請求する時季に有給休暇を与えていると、ご質問のように会社の業務が多忙な時期に当たり、業務の遂行に支障をきたすこともありえます。そこで、同法同条には使用者側の経営上の配慮をした時季変更権が認められています。
時季変更権とは、社員が請求した時季に有給休暇を与えると事業の正常な運営を妨げる場合には他の時季に与えることができるというものです。したがって、必ずしも社員の請求した時季に有給休暇を与えなければならないということにはなりません。有給休暇を請求された以上、社員に与えないわけにはいきませんが、与える時季を変更する権利は使用者側に与えられています。

Q

事業の正常な運営を妨げる場合とはどのような場合でしょうか。

A

例えば、会社で商談がある日にその社員が欠勤すると商談相手にプレゼンテーションできる者が不在になって業務に支障が出るケースや、月末の経理事務が忙しい時にその社員が欠勤すると残りの経理スタッフだけでは事務処理が終わらずに業務に支障が出るケースなどです。
事業の正常な運営を妨げる場合の判断基準として、有給休暇を請求した社員の仕事内容やその仕事の代替勤務者の有無などがあげられ、客観的・合理的な判断が求められます。
有給休暇の時季変更権を乱用することは、社員への不利益な取り扱いとなりますので、使用者には社員が有給休暇を請求した時季に有給休暇を与えられるような職場環境の配慮が求められていることも忘れてはなりません。

疋田秀裕(葛飾支部)
東京社会労働保険協議会 社会保険労務士
TEL03‐5671‐0891
http://www.hoken-kyogikai.com

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