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経営者Q&A

認知症になる前に、打つべき事業承継の方策~民事信託の活用(2023年1月)

Q

私が会社の社長(代表取締役)であり、全株式を保有しています。私が認知症になるとどんな問題が起こりますか?

A

もし、認知症になり判断能力がなくなってしまうと、社長として会社を経営することが困難になるので、株主総会で後継の取締役を選任する必要が生じます。しかし、株主総会での議決権の行使には、判断能力が必要です。判断能力を欠いている場合、株主総会決議ができず、取締役を選任することができなくなってしまいます。

Q

そうなったときには、成年後見人を選任することになりますか?

A

はい。何も準備していない場合、成年後見人の選任が必要になります。成年後見人を選任すると、すべての法律行為を成年後見人に委ねなければならず、あなたの自由度はかなり制限されてしまいます。
また、成年後見人の選任は、裁判所で行わなければならず、手間がかかる上、成年後見人に対する報酬が必要となる場合もあります。

Q

私には子供が3 人いますが、次女に継いでもらいたいと思っています。相続争いを避けるため、今のうちに次女に株式を生前贈与しておくべきでしょうか。

A

生前贈与ですと、株式の価格によっては、高額な贈与税が発生する可能性があります。また、生前贈与した時点であなたは株主ではなくなり、株主権は、お嬢さんに完全に移転してしまいます。
生前贈与ではなく、民事信託契約を締結しておく方がよいかもしれません。民事信託契約というのは、自分の財産を受託者に託して管理してもらうという契約です。
あなたが委託者兼受益者となり、お嬢さんを受託者として、株式の信託契約を締結します。株式の所有権及びその議決権はお嬢さんに移りますが、議決権の行使を指図できる「指図権」をあなたに残しておくことが可能です。そうすることにより、あなたは引き続き、議決権をどのように行使するかをお嬢さんに指図して会社経営を継続することができます。
そして、将来あなたの判断能力が衰えてしまった場合には、指図権を消滅させ、お嬢さんが議決権を行使することができように設計することが可能です。
さらに、あなたが亡くなったときは、信託を終了させ、お嬢さんに権利が帰属するとしておけば、お嬢さんに株式を譲渡ことができます。
また、万一、それまでの間にやはりお嬢さんが適任ではないと判明した場合には、信託契約を終了させて、株式を取り戻すことも可能です。

工藤 敦子(千代田支部)
弁護士
TEL:050-7108-2450
Email: Atsuko.Kudo@outlook.com

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