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経営者Q&A

値上げ交渉の進め方(2023年6月)

Q

原価が高騰しています。値上げを進めたいのですが、どのように進めたらよいでしょうか。

A

下準備としてまず原価を調査します。その後、交渉を開始します。兵法で言う「勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求むる」です。社会情勢・法律など値上げを受け入れる環境はあります。取引先の購買担当者の負担にならないよう、書面を準備することも大切です。
中小企業庁では価格交渉、価格転嫁について「価格交渉促進月間」として、フォローアップ調査の結果を発表しています。2022年9月に行った結果を発表しています。約15,000社から回答があり、6 割の会社が交渉を始めたものの、「全般的なコスト上昇分のうち何割を価格に転嫁できたか」という質問に、「7割以上転嫁できた」と回答した会社は約35.6%(10割転嫁できた会社は17.4%)に留まっています。
エネルギー価格の高騰・円安に伴い原価が高騰しています。外部環境による原価高騰の負担は、サプライチェーン全体でするべきという考えが根底にあります。賃上げは人手不足の要因もありますが、一人当たりの人件費を上げたい社会からの要請があり、外注価格の値上げも同様です。
交渉に進む前の準備が大切です。具体的には、原価の把握が重要です。例えば「小麦価格が上がって」など抽象的な説明では不足しています。
「何にどれだけの量を使用して、仕入れ価格が何%上がっているので、何円を上げてほしい」と伝える必要があります。仕入材料価格は、製品により数千種類に及ぶ会社もあることから、策定には工数も多くかかります。
また、取引先の購買担当者がその場で値上げ可否を決済するとは考えられません。購買担当者は上司に連絡し、決済をもらうことになると思います。そのため、書面を渡すと購買担当者も上司を説得しやすいでしょう。
以上は大企業か「購買担当者がいる」ある程度大きな会社を想定しています。中小企業同士の場合は、電話や立ち話などの交渉が想定できます。回答は早いと思いますが、お願いを手短に伝え、詳細は書面で渡しましょう。
書面で渡すのは取引先がその取引先に値上げ交渉をしやすいようにという配慮があります。
経済産業省では「価格交渉促進月間」で現状の把握やアフターフォローを進めています。他にも下請代金支払遅延等防止法(通称「下請法」)、下請中小企業振興法など法整備を進めています。下請けかけこみ寺など無料の相談窓口もあり活発に行っています。
「よい会社づくり」のためには、よい経営環境が必要です。その原資となる値上げに取り組んで、同友会で成功事例を共有することも重要です。ぜひとも他の中小企業の先行事例になっていただきたいと思います。

原 知世(豊島支部)
はら中小企業診断士事務所
中小企業診断士
TEL :03-6869-8225
HP:http://hara-smeca.jp
e-mail:tomotsugu.hara@gmail.com

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