給与のデジタル払いとは(2023年7月)
給与のデジタル払いが解禁されたと聞きました。どんな内容でしょうか。一部社員からデジタル払いに変更して欲しいと言われた場合、どのように対応したらよいでしょうか。
一部の資金移動業者の口座( 電子マネー口座) に給与を支払う仕組みのことです。本年4 月1日から解禁となりました。既に、給与の振込みについては、75 年から銀行口座、98 年から証券総合口座への振り込みが可能でした。キャッシュレス決済の普及や送金サービス多様化の中で、資金移動業者の口座への資金移動を給与の受取に活用するニーズが発生。社員の同意を得た場合に限り、一定の要件を満たすものとして厚労大臣の指定を受けた資金移動業者の口座への資金移動による給与支払( いわゆる給与のデジタル払い) が認められることになりました。社員は銀行を介さずスマホ決済経由等で給与を受け取り、会社も手数料の軽減を図ることができます。
指定の要件は、次の通り。①破産等により資金移動業者の債務の履行が困難になったとき、社員に対して負担する債務を速やかに社員に保証する仕組みがある②口座残高上限額を1人当たり100 万円とする③デジタル口座から資金が不正に出金された際に、社員に過失なき場合は損失額全額が補償される④ATMを利用すること等により口座への資金移動に係る額( 1円単位) の受取ができ、かつ、少なくとも毎月1 回は手数料を負担することなく受取ができる⑤最後に口座残高が変動した日から少なくとも10 年は口座残高が有効である⑥給与支払に関する業務の実施状況及び財務状況を適時に厚労大臣に報告できる体制がある⑦以上の他、給与の支払に関する業務を適正かつ確実に行うことができる技術的能力を有し、かつ、十分な社会的信用がある( 労基法施行規則第7条の2第1項第3号) こと。本年4月1日から解禁となっていますが、指定された業者がなければ、デジタル払いはできません。
給与の支払方法は、重要な労働条件の一つ、社員に対し明示が必要。入社あるいは、支払い方法変更の時から労働条件通知書等で文書の交付が求められます。給与の支払方法は就業規則の絶対的必要記載事項で、改定が必要です。加えて、厚労省は、事業場の過半数組合・過半数代表との労使協定を結ぶことを求めています( 基発1128 第4号及び「資金移動業者の口座への賃金支払に関する資金移動業者向けガイドライン」P21)。本人が希望しない場合は、これまで通り銀行口座等で給与を受け取ることができます。なお、同意しない社員にデジタル払いは強制できませんので、会社としては、慎重に対応して欲しいと思います( 前掲則第7条の2第1項)。
石田 仁(豊島支部)
協同組合ディーディーケー
経営労務コンサルタント・社会保険労務士
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