会社閉鎖の心構えについて(2023年11月)
やむを得ない事情で会社を畳むことになった場合、どのようなことを考えておくべきか、転ばぬ先の杖として念の為聞いておきたいのですが。
会社というものは、利害関係がいろいろありますから、会社閉鎖の場合には迷惑をかけないよう全体に目配りすることが必要です。
1、どこにも債務が残っていない状態で畳めるのなら、「お世話になりました。」の挨拶だけでよいのですが、債務がある場合には、その債務の状況次第で対応は異なってきます。会社の畳み方には大きく分けて任意整理と法的整理があります。
2、話合いで処理できる程度の債務であれば任意整理がよいでしょう。これは、自分であるいは弁護士等に頼んで個別にそれぞれの債権者について話をつけるものです。手間はかかりますが、関係者全員に納得してもらえるので、気持ちよい畳み方となります。弁護士を頼む場合は、債権者の数と金額、処分内容などによって費用は異なってきますので、依頼時によく話合うことが大切です。
3、この任意整理の一環として、一部の事業譲渡という方法も考えられます。収益性のよい部門だけを切り離して、他の経営者や今まで働いていた従業員の有志などに引き取ってもらうという方法です。譲渡の際の評価はなかなか難しいので、同業者団体とか専門家(公認会計士など)に相談することになりますが、会社を畳むことだけが目的の場合は無償譲渡でよいと思います。いずれにしろ、譲渡の際は後にトラブルを生じないよう、専門家に相談してしっかりした事業譲渡契約書を作成しておくことが大切です。(M&Aについては、会社閉鎖とは異なるのでここでは割愛します。)
4、以上のような話合いによる方法では対処しきれない場合、法的整理を選ぶことになります。法的整理にはいくつかありますが、急な会社閉鎖という場合には破産の申立てということになります。事業者の破産の場合、必ず管財人が選任されます。したがって、破産申立書を突然裁判所に持ち込むのではなく、事前に担当書記官に持込み予定日を伝えておく必要があります。事業の規模や内容などによって裁判所があらかじめ管財人候補者となる弁護士を予定しておく必要があるからです。
また、申立書も裁判所の定めた書式を使用することになりますので、裁判所のホームページからダウンロードして作成します。しかし、この申立てを経営者が自分で行うのは精神的負担が大きいので、弁護士に依頼してしまうほうがいいと思います。当然、相応の手数料が必要となりますが、これまで生きて活動していた経営体というのは、流れている川と同じで、ある時点で支払いの方だけを止めれば、必要な手続き費用は通常無理をせずに作ることができるものです。裁判所への予納金も必要です。
この「ある時点」のことを私たちは「Xデー」と呼んでおります。なお、社員にはこのXデーの数日前位には事前に話をし解雇の諸手続きを始めておくほうがよいと思います。また、Xデーには取引先にメールやFAXなどで通知することになりますが、この挨拶文は弁護士任せにせず、ご自分で心を込めて書かれるほうがよいと思います。
原口紘一(三多摩支部)
原口法律事務所
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