タイトルアイコン

経営者Q&A

いつの間にか、うちも「親事業者」!? 今年1月から施行された「取適法」の注意点(2026年7月)

Q

資本金1000 万円、従業員約350 名の自動車部品製造会社代表です。今年の1 月から下請法が変わり、我々の業界に大きな影響があると聞いています。何に気をつけたら良いのでしょうか?

A

2026 年1 月より、従来の「下請法」は全面改正され、「中小受託取引適正化法(以下、取適法)」として新たに施行されました。
これは、物価高騰下での適切な価格転嫁を促し、日本の商慣行を是正することを目的としています。下請取引が一般的な業界において、
特に留意すべきポイントを3 点に絞って解説します。

  1. 従業員基準の新設により、 「親」事業者になるケースが急増
    今回の改正で最も大きな変更点は、適用対象の基準に「従業員数」が加わったことです。
    これまでは「資本金」のみが基準だったため、資本金1000 万円の貴社は、多くの場合「下請(受託事業者)」の立場でした。しかし新法では、製造委託において「常時使用する従業員が300人超」(または資本金3 億円超)の事業者が「委託事業者(旧・親事業者)」と定義されます。
    従業員数が350 名規模の貴社は、取引先となる小規模な加工会社や金型メーカーに対して、法的に「委託事業者」としての義務を負う可能性が格段に高まりました。発注内容等の明示や正当な理由のない受領拒否・代金減額・返品・買いたたき等の禁止、受領から60日以内の支払いといった義務を、自社が「守られる側」から「守る側」として徹底する必要があります。
  2. 「価格転嫁」の協議拒否は禁止行為に
    下請取引が一般的な業界において長年の課題だった「価格据え置き」に対し、新法は非常に厳しい姿勢を打ち出しています。受託側から労務費や資材費の上昇を理由とした協議の申し入れがあった場合において、委託事業者側がこれを拒否したり、回答せずに据え置いたりすることが新たに禁止行為として追加されまし。
  3. 60 日以内の代金支払の厳格化
    納品から60 日以内に、受託側が「現金化できる状態」にすることが求められます。約束手形による支払は禁止され、電子記録債権により支払う場合でも、この支払期限を超える日を支払日とすることが禁止されます。
    また、振込手数料を一方的に受託側に負担させる行為についても、不当な代金減額として禁止行為となりますので注意が必要です。

今後のアクション:社内体制の再点検を
まずは自社の取引先リストを見直し、新基準に照らしてどちらが「委託(親)」で「受託(子)」になるかを再確認してください。また、物流・運送委託についても新たに「特定運送委託」として規制が強化されています。
「知らなかった」では済まされない時代です。パートナー企業と誠実な協議を行い、共生共栄の取引関係を築く契機にしていきましょう。

大髙 友一(港支部)
中本総合法律事務所東京事務所
弁護士・経営管理士
TEL:03-5771-6248
HP:https://nakamotopartners.com/
事業内容:企業法務を中心に民事一般を扱う。
とりわけ、広告表示や特商法等のBtoC 取引関係、コンプライアンス問題、不動産関係全般、海外取引、相続や事業承継に精通する。

戻るボタン
経営を磨きたい 経営の相談をしたい 交流したい 人を採用したい