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中小企業家群像

ジュエリーパーツの技術で創作和楽器に挑戦
株式会社セベル・ピコ 二宮 朝保 氏(葛飾支部)

株式会社セベル・ピコ(葛飾支部)
代表取締役
二宮 朝保 氏
東京都葛飾区青戸1 丁目8 番地2 号
設  立 1973 年
資 本 金 3300 万円
従業員数 30 名
(海外独資子会社150 名)
事業内容 宝飾パーツ及び宝飾品の企画、製造、卸販売
生産拠点 東京工場、愛媛、セブ(フィリピン)、タイ

目には美しいものだけ見せ、耳には妙えなる音だけを聞かせて一生を過ごす人生があるとする。そんな理想がよもや企業として存在するとは思わなかった。日暮里から京成線。青砥駅で降り徒歩で5分。宝飾パーツ専門メーカーを訪ねた。つもりだった。

着いたところが小型の三味線だらけなのである。私に予備知識は全くなかった。何かの会館なのかと戸惑うのだが今日の訪問企業で間違いないらしい。

ほどなく代表者の二宮朝保社長と名刺交換。以前に葛飾支部長を経験された氏とは面識があったのである。

転籍を経て1970年3月、個人で創業、商品開発をはじめる(22歳)。3年後に㈱ジュエルパーツ・ピコを設立し法人化の夢を果たす。

高精度のコピー商品対策のために「知財でも闘える会社」を目標に、開発と知財に携わる。従業員30名。特許等の平均年間出願件数は10件、意匠登録が12件、商品登録が約15件と、この方面への注力は会社の運命を左右する。

「宝飾用留め具」。着脱のしやすさ、美しさなどで高い評価と売上実績を誇る平成10年以降の大ヒット製品だ。

海外に生産拠点を作りながら国内を充実させてきた二宮社長。「夢を追いかける」「物を造るのは楽しい」と、全く別分野の和楽器に力を入れ始めたのは、つい最近のことである。

「シャミコ」は思いつきではない。東京オリンピックの指定商品にもなり音楽や踊りに葛飾区も大乗り気なのだ。

展示されていたのは創作和楽器で枡三味線「シャミコ(SHAMIKO)」と言う。

この楽器、弾くだけでなく、四角の胴を利用して垂直に立て部屋に飾ることもできる。単純なのから複雑な浮世絵、絵柄で日本文化の伝統を表現すれば耳にも目にも奥行きが広がる。

資料からシャミコの特徴を拾いだしてみる。子どもや高齢者、外国人にも親しみ易く、材料も持続可能な「現代風三弦楽器」を開発。通常「白一色」の皮を「源氏物語絵巻」の図柄で楽器の他にインテリアとしても映えるものにした。伝統的三味線の皮は犬や猫の皮を使用するのに対し、シャミコでは「特殊紙」を使用。持続可能な生産体制に注力する。

二宮社長は静かで雄弁である。1947年愛媛県八幡市で生まれて県立八幡工業高校機械科を卒業、腕時計外装ケースを製造する会社の狭山工場技術課に勤務。

ここにいたる迄の間に日本の伝統芸能や文化とともに歩んできた三味線が日本舞踊の衰退とともに沈むのは寂しいと二宮社長は立ち上がる。

単に和文化の発想を超えて「源氏物語」、「小倉百人一首」、浮世絵、大和絵までをシャミコの絵柄に活用する。

二階には冷泉家由来の「源氏物語」資料を展示してあり幽玄の世界にひたることも可能なのだ。一瞬、自分は今どこにいるのだろうと、あたりを見廻したりする。

気が付いてみれば私たちが訪問したのは四階全フロアが関連のシャミコ会館だったのである。

ついでにルナ・ケンゾー氏に作曲を依頼された「東京シャミコ音頭」を映像と共に聞く。これが軽快ですぐにでも踊りだしたくなる心地よさなのだ。実は振りも専門家に付けて貰っているとのこと。これは格好のまちおこし地域振興に役立つ。東京同友会でも力を発揮する機会があるのでは。

氏が同友会に入会したのは37年前、長島さんのあとを継いで二代目の葛飾支部支部長を務められた。

この日、帰路が楽しく、東京同友会には立派な方がおいでになると清々しい気がした。

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