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中小企業家群像

「新たな価値の創造」を目指して 税理士法人シンフォニー 新井 庸義 氏(文京支部)

税理士法人シンフォニー (文京支部)
代表社員 税理士・行政書士
新井 庸義 氏

住  所:文京区千石4-36-16
創  業:1989 年(設立2019 年)
事業内容:税理士・行政書士(事業承継対策、相続対策、株式対策、給与体系、会社の健康診断など、中小企業の経営を守る支援)
社員数: 12 人

文京区千石にある税理士法人シンフォニーは法人化して1年が経つ。新井さんは東京都北区の生まれで、旋盤工であった父の背中を見て育った。「勉強嫌いで人と話すのが苦手だったので、くいっぱぐれのない寿司職人になろうと、高校時代に寿司屋でアルバイトをしていました。大将から寿司のにぎり方を教えてもらって、当時は学校の授業中も綿をシャリの代わりにして練習してましたねえ」と消しゴムで実演してくれた。なかなかの手つき、さすが昔取った杵柄である。

ある日友人から「算盤1級を持っているんだから、それを生かすには税理士がいいよ」とはじめて税理士という職業を知った。努力することは好きだが人付き合いの苦手な新井さんは、税理士なら下を向いて計算をしていればいいと思い込んで、5年間仕事をしながら必死で勉強した。この期間で初めて勉強する楽しさがわかってきた。
27歳で税理士試験に合格した。昭和62年に独立し、新井会計事務所をスタートする。顧客拡大で社員を増やし、事務所移転を繰り返し、平成9年に現事務所を購入した。借金が雪だるま式に増えた。経営とは何かもわからず「退路遮断だ」とがむしゃらに拡大路線を突っ走ったのがこの時期である。

開業10年間は順風満帆だった。365日フル稼働、仕事を取ってきては社内に投げる日々だった。社員と向き合わずその結果、次々と社員が辞めていった。自分が組織の敵になっていた。対話の重要性に気付き社長のプライドを捨て社員の本音を聞き取り、自分の価値観と向き合う「対話型経営」へ転換していった。

平成19年に水戸の同業者から紹介された東京同友会文京支部の例会で、同友会は理念を大切にしている会だと知った。新井さんも、全日本経営人間学協会の竹内日祥上人の「価値観学」を学び「理念」を大事にしていた。

同友会で最も勉強になったのは役員研修だった。新井さんは、「会社は顧客第一主義」が当たり前と思い込んでいたが、セーフティ&ベルの宇佐見弘会長が講義の中で「会社は社員第一主義、社員は顧客第一主義」と言われた。今まで社員という意識がなかったことに気づかされ、今年の人事理念に「会社は社員を第一主義に徹底する」と明記した。

令和1年9月「税理士法人シンフォニー」に社名変更した。社名の命名者は奥様である。多数の社名を考えたが自分の思いを奥様に伝えると「それってシンフォニーじゃないの」と言われた。symphonyの語源は、ギリシャ語の【syn=共に】と【phonny=響く】にある。統合と調和、優しさと思いが伝わってくる社名である。

経営理念は「中小企業の経営を守る」。そのためにサテライト型組織体、社内ワンチーム、社外ワンチームという構想を持っている。サテライト型組織体とは、縦割りの組織ではなく、一人ひとりがプロフェッショナル化して縦横無尽に繋がること。社内ワンチームでユニークなのは、変化の激しい環境下で状況を見据えながら適応するジャズセッション型協働チームである。そして、専門家がそれぞれの立場で支援するだけでなく、専門領域を統合することによる叡智の集合を行い、社外ワンチーム体制で顧客貢献をする。専門家がチームを組んで響き合えば、それは中小企業にとって大きな力となることだろう。

「経営者になってよかったと思うことは、最初は物事がすべて自分で決められることでしたが、今は人が育つこと。社員の成長がとっても楽しみです」と話す新井さんの笑顔には次なる決意と優しさが溢れていた。

文京支部支部長、西部協議会議長を経て現在は組織部の新会員オリエンテーション担当で活躍中である。

新井さんは努力が大好きな人であるという印象を強く感じた取材となった。

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