タイトルアイコン

中小企業家群像

ブレない経営の軸は経営指針にあり~お客様の喜びを自分の喜びとして、この街に「ねぎし」があってよかったと思われる店づくり~
株式会社ねぎしフードサービス 根岸 榮治氏(新宿支部)

株式会社ねぎしフードサービス (新宿支部)
代表取締役
根岸 榮治 氏
住  所:東京都新宿区西新宿7-22-36
創  業:1969 年
資本金:5,000 万円
事業内容:牛たん・とろろ・麦めしねぎし
社員数:正社員 151 名、アルバイト 1485 名(内外国人アルバイト9.2%)
主な受賞歴:日本経営品質賞・農林水産大臣賞・東京都中小企業技能人材育成大賞知事賞

月刊中小企業家の裏表紙の広告をご覧いただいていると思うが、「牛たん・とろろめし・麦めしのねぎし」と言えば全国的にも有名である。西新宿の㈱ねぎしフードサービス本社に根岸榮治さんを訪ねた。

根岸さんは福島県いわき市の育ちである。実家は時計・貴金属などを扱う店を経営していた。当時、お客様は月賦払い、仕入れは一括払いで資金を圧迫してやむなく店を閉じることになり、根岸さんは東京でサラリーマンを7~8年経験後、故郷に戻った。まずは日銭を稼げる飲食店を始めた。節約しながら東京のセミナー「飲食店経営」に参加した。根岸さんは「外食産業」の先駆けである。

開業資金は実家のこともあり、なかなか貸してもらえず、旧国民生活金融公庫から粘り勝ちでなんとか資金を調達することができた。いわき市で東京でも流行りはじめのカレー専門店を開業した。これが飲食店の始まり。毎日長蛇の列で大人気店だった。その勢いもあり、福島県・茨城県・宮城県にまたがる広範囲に珈琲専門店など多業態を出店する「狩猟型経営」をしていた。次から次へと出店した。すべての店が大当たり!その勢いもあり仙台へお店を出店した。この勢いでと思った矢先、社員とアルバイトが出勤してこない、一体どうした?なんと店をまるごとコピーされ、従業員全員を引き抜かれてしまったのだ。

今まで自分は、従業員を使い捨て、悪ければ取り換えるという育てることもなく「材料」扱いしていたと深く反省した。「因は我にあり」と気づいたのである。教育とコミュニケーションの大切さを痛感した。社員は「人財」であり、「働く仲間」だ。これは経営指針の柱になっている。

1995年、東京同友会に入会し、すぐに「経営指針書セミナー」に参加を勧められた。同友会での学びは大きな力となったと語る。現在、経営指針書は店長が計画から参加して策定していて、それが「ねぎし」の成長の秘
訣でもある。

1981年に東京新宿区歌舞伎町に牛タンの定食屋「牛たん・とろろ・麦めし ねぎし」の第1号店を出店した。他業種経営から同一業態での「農耕型経営」に変え、ドミナント戦略により本社のある新宿を中心に集中出店を続け、現在は40店舗を展開している。店舗はすべて本社まで30分以内で集まることができる位置にある。従業員同士の顔が見える範囲で集まることで場所づくりを目指した。

看板メニュー「ねぎしセット」は牛たん・とろろ・麦めしの組み合わせ。しかし、2001年では日本、2003年には米国でBSE(牛海綿状脳症)が発生した。そこで、牛たん一本の商品構成から牛・鶏・豚メニューを開発し、「肉の定食屋」として乗り切った。当時のことを振り返ると「本当に大変でしたが、ピンチをチャンスに変えました」とニッコリ。今年はコロナ禍で飲食業は大変な中ではあるが売上が85%台に戻ってきている。

ねぎしの経営の目的は、①働く仲間の幸せ、②日本のとろろ文化と日本の農業に貢献する、③おいしい味づくりで楽しい街づくりである。

アルバイトの入店前研修があることに驚いた。そこでは経営理念を徹底して伝えている。従業員すべての人が「おいしさ」のためにこだわりをもち、親切を実行できる人づくりのために理念共有と人財共育が重要と考えている。

働く仲間が、お客様の喜びを自分の喜びとして、「この街に『ねぎし』があってよかった」と思われる店を目指し続けている。「虎屋は羊羹一本で500年続いているのですよ。すごいことです。わたしもまずは100年永続企業を目指しています。これからは人が主役の時代です。理念に共感し、一人ひとりが輝く企業にしていきたいですね」と力強く語る。

昨年創業50周年を迎えた。理念の追求と共に自由闊達な風土づくりで100年企業へと、根岸さんの挑戦は続く。

取材後、「ねぎし」エルタワー店で昼食をとった。スタッフの笑顔と気配りが牛たん定食の味をよりおいしくさせてくれた。「ねぎしがあってよかった。ありがとう」。

戻るボタン
経営を磨きたい 経営の相談をしたい 交流したい 人を採用したい