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中小企業家群像

想いのムコウへ ~ あってよかったと思ってもらえる会社を目指して ~
株式会社文優社 土屋 将貴 氏(墨田支部)

株式会社文優社
代表取締役
土屋 将貴 氏(墨田支部)
【会社概要】
設 立 1985年
資本金 2000万円
業務内容 広告、印刷物、電子ブック、ノベルティー等の企画、立案、制作
社員数 11人
住 所 東京都江東区東陽1-17-11

東西線木場駅の地上に出て、すっと東へ。ほどなくすると「大門通り」と行合う。ここを南下し、ふらふらと顔を振ると興味深いお店がコンニチハ。まずは魚屋。香ばしさを漂わせる焼き魚弁当が並ぶ。後ろ髪をひかれつつ、歩みを進めると今度はにぎやかな声が。お昼にもかかわらず熱気を放つはほぼ満員の青果店。品ぞろえの豊かさに対し、価格がリーズナブル。なるほど…と顔を上げると、落ち着きある赤色の建物と『あ゛っ』の文字がおどる立て看板が目に入った。そして、すっとドアから出てくる見知ったお顔。そう、土屋将貴氏だ。「そろそろ、いらっしゃるお時間だと思って」とひと言。土屋氏はこの墨田江東生まれ。「あちこちと遊びまわっていたので、区分けはないんですよね」とほほ笑む。かの魚屋は百年近く続いており、氏もよく焼き魚弁当にお世話になっているそうだ。大門通りの由来などを聞いたり、そのまま立ち話をして10分強。心地よい風が通りを抜けた瞬間、「そろそろ会社に入りますか」と土屋氏。しかし、流れに逆らうかのごとく社内で出てきた最初の言葉は、四面楚歌、だった。

突然の事業承継

「当社はおかげさまで37期目を迎えます。祖父は板橋で事業を営んでいました。その流れか父も様々な事業に挑戦。そして従兄弟の経営する江東区の印刷会社の一角を借りて、印刷業を開始。文優社の創業となります。企画から請け負う姿勢で臨んでいたそうです」と土屋氏。「私自身、事業を継ぐ継がないかはさておき、いつか承継は訪れるかもと学生時代から頭にはちらついていました。それもあり、中小企業とともに歩む信用金庫に就職をします。そして32歳、2010年11月。突然、会社を継ぐことになりました。父が出張先で事故死をしたのです」。静かな間が空き、「古参社員は承継に足踏みをし、従兄弟はあなたが継ぎなさい、と。当月に勤務先に辞表を出し、翌12月に文優社へ。それまで会社の決算書を見たことすらなく…そして継いでみたら、待っていたのは長年横たわる想定外、でした」と手元を見つめる。「社内の統制は目を覆うばかり。さらには社内の感情は協力会社から漏れ聞くという状況。次いで東日本大震災での営業苦。会社をつぶすために継いだわけじゃない。まさに四面楚歌でした」。

同友会との出会い

「信金を辞める際、挨拶にうかがった社長から〝これからの社長は勉強しないと生き残れないよ〞と助言をいただきます。すぐさま入会したのは地元墨田のフロンティア墨田塾。事業承継のあれこれを学ぶ場でした。ここで元墨田支部長の磯部泰司さんから同友会を勧められ、そのまま入会。翌年には成文化セミナーを受講します」。「成文化セミナーでいただいた叱咤激励はたくさん。学びをもとに社内と向き合うも、古参社員との確執や既得権との戦いの日々が7〜8年と続きます。同じ長期的な目線で見て欲しかっただけなのですが、いま振り返ると短期思考に陥らせてしまったのは私なのかもしれません。そうしてゆるやかに人の入れ替わりが行われていきます」と目線は天井へ。

先代から変わらぬ想い

「話が変わるようで続きます。当社は江東区で最初にMackintosh を導入し、DTP がもたらす納期短縮の効果を活用。変化の激しい流通業や飲食業のお客様とのニーズがマッチして、受注を伸ばすことができました。それゆえ、当社はお客様の肩を抱くという姿勢で業務に取り組んでいます。承継してから七年目には社員たちと〝当社は何屋か?〞を考え、情熱解決業という事業ドメインを見出します。常にお客様側の立場に寄り添い、商売繁盛に向けたデザインワークでお手伝いをしたい。これを確認出来て思うのは、変えていくのは大変だということ、そして、人が残ってくれていることはすごい、ということです」と張りある声に。「目指すは、あってよかったと思ってもらえる会社。働く人、お客様、そして地域から、です。印刷業を超え、商売繁盛のお手伝いをする応援団でありたい。そう心を強くし続けた10年でした。現在は受注商売がメインですが、いつか自社オリジナル商品も持ちたいですね。夢は父の時代よりも会社が成長発展していることです」と頬をゆるめた。

同社のお客様向けお便りをいただいた。デザインにてユーモラスさを添えつつ、軸にあるのは相手を巻き込み、気遣うメッセージの数々。同社到着のまさに直前、「そろそろ、いらっしゃるお時間だと思って」とすっと大門通りに出てきてくれた土屋氏の身心が一貫して表れている。

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