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中小企業家群像

成長、学びを得られる仕事づくりを ~ そのまま語り合える関係づくり ~
有限会社まるみ 三鴨 岐子 氏(八王子支部)

有限会社まるみ
代表取締役
三鴨 岐子 氏(八王子支部)

 

【会社概要】
設  立:1996年
業務内容:名刺デザイン・製作、チラシ、パンフレット、冊子等各種デザイン・制作、ホームページ制作など情報処理サービス、アウトソーシング
従業員数:11人(パート含む)
本  社:東京都杉並区下高井戸1-25-12
万国屋ビル3 階
まるみラボ:東京都杉並区下高井戸2-10-21

まるみの歩み

「ものごとをハカルことって、不思議がいっぱいです」と三鴨岐子さん。「名刺製作の機器販売および名刺製作から創業した当社。昭和五五年に父が前身の会社を西新宿で立ち上げ、この“まるみ”は2社目にあたります」。「前身の会社は名刺事業が軌道に乗りかかったところで資金繰りに失敗し、閉じることに」と振り返る。「中学時代から間近で父の事業を見ていて、零細は大変だなと。で、大学時代、父の営業について行き、松下電器のオフィスに訪問。大企業ってステキ… って」と手を合わせる。「バブル期で希望通り、東証一部上場のリース企業に勤務。五年少し勤めましたが、出産退職」。「図らずも、父の事業の手伝いへ。一方で家業を手伝う中、大手勤務時代は仕事で成長する、学ぶという発想がなかったことにはたと気づきました。これも不思議ですよね」と三鴨さん。
「父の事業が立ち行かなくなり会社を閉じる際、この状況に手を貸してくださる方がいらっしゃいました。しかし、残念ながらその方は父の顧客が目当てという謀があり。結果的に別に恩人が現れ、場所を貸してくださることに。そこで再起に6年をかさねました。この流れで創設されたのが “まるみ” という経緯」と手元を見つめる。「90年代後半から2000年前半までは、小さな会社でも名刺印刷で成り立ちました。金融機関など同じ型の名刺をたくさん、早く作るということに本業態の立ち位置があったのです。実家には紙の在庫が山ほどあって。それを机にデスクワークをしたりもしました。懐かしいなぁ」と天井を見つめる。「そんな時代でしたから、父は新聞を毎朝読み込んで、大企業の合併の記事を見つければ、そこに飛び込み営業をしていました。しかし、事業承継も視野に入ってくると、父と私の関係もぎくしゃくした状況に」とひと呼吸。「私に任せざるを得ないのに、横から口を出す。耐えられなくなった私は、3年間音信不通にした時期もありました。その間はコンビニでのパートも経験」。「そして、父のガンが発覚し、当社に戻ることに。事業承継から2~3年経ったとき、襲ってきたのはリーマンショックでした」。

リーマンショックと同友会

「父が作ってきたレールの上を歩いていたのだなと気付かされた出来事でした。お客様先にうかがうと、“今月で取引終了”という通告が立て続けに。売上も3分の1に落ち込むなど、どうしてよいかさっぱり分かりませんでした」と三鴨さん。「紙の仕入先の社長さんに相談をし、同友会を紹介いただきます。中央区支部のランチ会に参加し、すぐに入会。翌年には坂本光司先生の講演に参加。そのあとの懇親会で成文化セミナーの存在を知り、“会社がよくなるんだったら行きます” と参加表明」。「2012年には八王子支部設立準備委員会に呼ばれ、八王子支部へ。同友会のみなさまからは本当にたくさんのことを教えていただいています」。

 

推し量ることなく、そのままで

 

「障害者委員会(当時)において、7年前には委員長を拝命し、現在の多様な働き方推進委員会への改名に取り組みました。
実は当社には精神疾患をもった社員がおり、彼女の存在が本委員会に取り組むきっかけでもあったのです。疾患やそれに付随する悩みを抱えている人が、推し量ることなく、それらを打ち明けてくれるような会社を目指せないか。そう思ったんです」とそっと手をにぎる。「このような試行錯誤もあり、2021年、東京都から初のソーシャルファーム企業として認定されました。この制度は働きづらい人達を支援する条例がもとになっています。働きづらさが解消すれば能力を発揮する人は多く、彼らと一緒に働いていきたい」と前を向く。
「いま、ウェル・ビーイングという考え方が注目をされています。存在そのものを認め、できなかったことではなく、できたことに焦点を当てるあり方です。たとえば退勤時、 “あ~あれができなかった” と振り返りながら家路につくのではなく、純粋に “今日も一日よかったなぁ” で帰る。このような会社にしていきたいです」。「父が名刺事業に取り組んでいた時代は、ソフト面でもハード面でもちょうど名刺印刷業が求められる過渡期だったのだと思います。
リーマンショック後はそれらの景色が変わりました。現在は名刺だけではなく、デザインやWEB などの周辺業務を押し広げています。「まるみ」もどのような道で生きていけるのか。想いを図りかさねる日々です」。「でも、名刺の仕事が原点で、やっぱり好きです」とほほ笑んだ。

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