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中小企業家群像

人あってこその業態、わが社 ~ 時流を感じ、人の成長を支えたい ~
ゼネラルボンド株式会社 後藤 栄太 氏(目黒支部)

ゼネラルボンド株式会社
代表取締役会長
後藤 栄太氏(目黒支部)

 

【会社概要】
設 立 1958年
従業員数 15 人
事業内容 既存建設構造物の維持保全及び改修工事(建築物-コンクリート-の調査、診断、改修、補強、防水、総合仕上げ工事、土木構造物の補修補強、不動産事業)
所在地 東京都目黒区大岡山1丁目37番地25号
ゼネラルボンドビル
HP https://www.general-bond.co.jp/

「当社近辺は、50年近く変わっていないですね。社員の半数近くも歩いて通勤してきています」と眼下の緑道を見つめながら笑顔の後藤栄太氏。会議室の壁には、目黒区、東京都、日本、そして世界と四種類の大きな地図が貼られている。「この地図は初めて新卒社員を迎え入れる際、研修の一環で準備をしたもの。仕事はローカルだけど、目黒から世界へとつながっているんだよって、そんな視野の話をしていました。今も地図を見ているだけでも発見がありますね」と朗らかな声が会議室にしみ込む。

 

設立からつづく、人の大切さ

 

「私たち建設業界はとにかく人がいないと動かない世界」と後藤氏。「特殊化学品メーカーとして昭和33年3月、父が創業。当時、日本は高度経済成長に沸き立ち、インフラ整備が盛んに。ダムやトンネル、道路などのひび割れや漏水対策として、防水・止水する資材を製造し販売していました」。「そして15年後に訪れたオイルショック。資材を卸していた建設業者が会社を閉じ始め、これらの仕事を継承すべく、社内で建設部隊が立ち上げられます」。「開業前、父は大手薬品メーカーに勤務。創業時に全国展開を志しており、これが総合を意味するゼネラルを社名に冠したゆえんです」。
「当時は、危険を伴う地方の山間部への長期出張や夜間工事も多く、現場の人の入れ替わりが激しく悩みがつきない。そして、父はこう考えます。仕事はあれども、働く人の心を殺してしまう、と。結果、これらの事業から撤退を決意。幸い当社には防水工法の技術がありましたので、これを地域の建物の防水、止水工事や地方の一般廃棄物処分場に活かすなど大手ゼネコンさんと事業を進めてきました」。

 

新事業展開、人と時流

 

「私が当社に入社したのは昭和60年。大卒業前には就職活動をしていたのですが、10月ころに父から、直接うちに入ってこい、と。大学教授のご縁で、九州から理工学の学生が複数名入る。一緒に盛り立ててくれという筋書きでした」。「入社後は父から新たな事業展開を託されます。新しい建造物は景気の影響を受けるが、一度建ったものはそうそう取り壊されない。つまりメンテナンスが入るのだから、この保全をわが社の事業にと」。「それで私も一所懸命に飛込みをしてお客様とつながり、現在に至っています。また大手ゼネコンさんとの事業もあり、ここから安全方針などの考えもいただいています。ありがたいことです」と振り返る。
「目の前のことに向き合い続けて、2010年。40代の終わりに近づいた私は新卒採用というテーマに行き当たります。次の世代に事業を引き継いでいく必要性を感じたのです。外部の協力も仰ぎ、活動を開始。丁度リーマンショックの直後の就職難の時期と重なるも、独自の会社説明会に100名近くの学生が毎年集まってくれました。結果、4年間で合計11名の新卒採用に」。「社内の雰囲気も明るくなり、他社からすると離職率が低く不思議がられるほどでしたが、彼ら彼女らが30歳を目前にすると、ひとり、ふたりと会社を離れていきます」と指先を見つめる。「これは私自身の経験からもわかる気がします。他社を知らず、経験を積んでくると今の自分を顧みる時間も増えてくる」。「一部の退職した社員とは今でもつながりがありますが、当社にいてステージごとに成長ができる場を提供できていなかったと反省しています。経営者はどんな場面でも学べる機会はある。しかし、社員はそうではない。成長できる場を常に育む必要があったのです」と語る。「以前にも増して、時代の流れはさらに速い。であれば、新しい世代にバトンタッチできる環境のうちに任せたほうがよいと思い、昨年8月に長男に事業承継。とある仲間から “後藤さん、時代が変わるときに経験ってなんなのでしょう”と言われたことも後押しに。今後、突然何が起きるかわかりません。ゆえに時流を感じるゆとりを持っていたい」と穏やかな時間が流れる。「還暦という節目を迎え、しばらく仕事ではサポート役に徹しながら人と会社の成長を見守るとともに、次の時代に向けて自分に何が出来るか考えたい。そして体力がまだ充実している65歳までは旅行もかねて各地のマラソン大会を回りたい。それ以降は50歳で一度やめた、スキーにヨットと楽しみたい。今ある資源と環境をどのように活かせるか。ナンテ考えるとワクワクします」と、ひと一人ひとりを尊重し続ける後藤氏が自身のことも語ってくれた。

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