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中小企業家群像

伝えることができるよろこび、 人のことを考えられる幸せが経営の原点
萬 英子 氏(目黒支部)

株式会社みどりえビオジャパン
代表取締役
萬 英子 氏(目黒支部)

【会社概要】
設 立 2001年2月
従業員数 正社員 8名 アルバイト 20名
事業内容 有機食材を使用した調理品、スイーツの企画、小売り、飲食店の経営。および、弁当宅配・ケータリング、通信販売業務
所在地 東京都目黒区鷹番3-4-18-102
H  P  https://midorie.co.jp/

2001 年2月、目黒区にてオーガニックレストラン& デリをオープンした萬英子さん。東急東横線学芸大学から徒歩5分ほどの好ロケーション。開店にあっては食品業界の知人からのアドバイスをもらいながらリサーチをして当地を選択したという。「せっかくココを見つけるも、出店をビルオーナーから3回断られました。でも諦めず、同じビルに入ってる店舗さんの理解を得ることからはじめ、ようやく管理の理事会で許可をいただきました。当時担当してくれた不動産会社の担当さんがこの成約に涙を流して喜んでくれたんです。嬉し泣きしたのは私ではなくって」。ここまで萬さんを突き動かした源泉には、身をもって体験した死生観がある。
「当時はまだ自然食に対して、一般的に胡散臭い印象もある中、グルテンフリーとかヴィーガンとかを押し出して、さらに割り箸も出さないなど我ながら尖っていたと思います。ひとり目のお客様は、隣の不動産会社のおじさまだったんですよ」と笑う。
陰極まれば陽に傾く、と話す萬さん。開店当初は通りがかりのやはりおじさまから「趣味でやってんのか」と心ない言葉を投げかけられた。創業2年間のヒリヒリした日々、東日本大震災での風評被害、そしてコロナ禍での困難とをくぐり抜けている。
現在にもつながる転機は開店の3か月後。チーフシェフとの出会いであった。「シェフの募集をしていて、彼が申し込んできたんです。お母さまが無添加食を日常出されていたそうで、Midorie に興味を持ってくれたのでした。とにかく目が輝いていたのが印象的で、採用を2日考えました。そして、よしっ、この人に給料を支払っていこうと。以降、二人三脚で運営をしています」。次の転機は2年目の通販事業開始。ニンジン無添加ケーキを取り扱い、それが大手商品メーカーの景品に選ばれる縁が訪れる。そしてケーキがメディアに載るという循環へ。「神風が吹いたって喜びました。実情はハンドミキサー片手に、えいこらえいこらと深夜に調理をしていたんですけどね」と微笑む。「東日本大震災では風評被害で九州から関西の注文がゼロに。それで今につながるケータリング事業を始めました。店舗経営は場所と人が必須ですが、ケータリングはそのような制約も開放してくれます。法人であれば500 名までのパーティーに対応できます。上限がないんですよね」。コロナ禍にあっては耐え忍ぶ時間もあったが、オーガニックおせちというヒット商品が生まれた。急速冷凍機が助成金で採択され、セントラルキッチンもフル活用の日々。「コロナ禍、レストランも時短営業でしたが、それが働く環境改善にもつながりました。スタッフの日常生活を考えると、このままの経営でもよいのかなと思います」と、そのように語れるようになったのは同友会との出会いである。「後藤せき子さんがオーガニックレストランに関心をもたれて、当店にいらしたんです。
20分ほどお話して、あなたも外に出て学びなさいと言われて、ハイって」と振り返る。目黒の店舗ほか、デパ地下にも出店したり、どのような経営スタイルでいくのか心身ともに悩みがあったんです。でも、同友会のみなさんと学びをしながら3〜4年と。それまでは男性的な経営をモデルにしがちでしたが、自分のやり方でいいんだと自然に変化が」。「スタッフがバーベキューを企画してくれたり、誕生日には私をお祝いしてくれたり。私の中で幸せになっています」と嬉しそうに語る。
そして萬さんとオーガニックとの出会いについて触れたい。大卒後、入ったのは広告業界。仕事に没頭。夕食は外食、朝は野菜ジュースで済ませる日々で、身体が変調をきたし始める。結果、顔面麻痺が現れることとなった。様々な治療方法を試し、身体を好転させてくれたのがオーガニック食品だったのである。「オーガニック食品と出会う前は、なんのために生きているんだろう、なんで私だけと自分の心配ばかりの2〜3年でした。そしてオーガニック食品との出会いを通して、世の中のこと、人のことを考えられるってなんて幸せなことなんだろうって、はたと気づいたんです」と手元を見つめる。「オーガニックのことをみんなに伝えたい、伝えられるって幸せだと思ったし、実際、幸せをいただいています」。
「改めて店舗のお客さまに触れると自分の原点を確認できます。オーガニックレストランですから体調改善を求めるお客さまもいらして、もちろん言葉が出ないくらいの生の別れもにも立ち会っています」。「ひとり一人のお客さまがいて Midorieは成り立っています。だからこそ、命ある限り精一杯生きないと、と思います」と食事をされるお客さまを見つめながら語ってくれた。

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