タイトルアイコン

中小企業家群像

私たちの手で未来を創り出す ~手ごたえを学び合う組織づくり~
渡邊 基 氏

株式会社 IPT
代表取締役
渡邊 基 氏(八王子支部)

【会社概要】
住 所 東京都日野市高幡1005-8 Dignita801
創 業 2015年 11 月 16 日
事業内容 組込みソフトウェア開発、コラボレーションプラット
フォーム製品の導入コンサルティング
従業員 27名
U R L https://ipt-plus.com

「生き生きとしたみんなを見てるのが好きなんですよ」と取材の最後のさいごでつぶやいた渡邊基氏。日常が目に浮かぶような表現はなにも噺家だけのものではない。ことば以外に佇まい、目配りなど”間”からも感じ取ることが出来るのだ。
2025 年、組み込みソフトウェア開発やアプリケーション開発を主軸とする株式会社IPT は創設10周年を迎えた。これを記念して、伊豆半島の相模湾に浮かぶ初島にて社員旅行がとりおこなわれた。社員による企画で、20名が参加。全員が集合しての記念写真撮影の際、こんなやりとりがあった。まず記念撮影だから社長が中心に来てほしい、との声が飛んだ。それを受けて、真ん中へと歩み出る渡邊氏の様子を見て、「渡邊さんの社長っぽいところ、初めて見た!」ともらしたのは入社3年目の新卒採用の社員であった。
IPT のホームページには社内の雰囲気(職場でのフォローや研修制度など)が伝わる記事が掲載されている。いずれも自主性が尊重され、尊重しあっていることも感じ取れる。しかし、それが社風かどうかは判断を置きたいと渡邊氏は語る。「現在は初めて新卒で採用した人材が7年を超えても、6人在籍してくれている状況ですが、設立当初は社員同士のつながりなどで当社に来た人材が8割。いわゆる社風はなかったと言えます」。
社風や文化という表現をとっているが、渡邊氏の想いはただひとつ。社員には自分の意見が会社に反映されるという感覚を持ってほしい、という点にある。
日暮里に上京し、新社会人生活を始めた渡邊氏。ビル管理会社でPC 修理などもするうちにソフトウェアに興味を持つようになった。3年後、IT 業界へと転職。エンジニア職を志望していたものの、配属は営業。14年間、キャリアを重ねるが転機が訪れる。現場と経営をつなぐべく、渡邊氏は社長との定期的なコミュニケーションは欠かさなかった。しかし、ある日、明け方まで語り合っていたバーで社長からこのような言葉が飛び出した。「俺の会社だから、俺のやりたいことをやる」と。この衝撃を耳にした瞬間、渡邊氏は人目もはばからず、あまりの悔しさに嗚咽をもらした。社員のひたむきな声を活かさない会社とはなんなのであろうかと。
2年後、地元北海道の同級生が経営していたソフトウェア開発会社の東京事業所新設を氏は担うこととなった。そして東京で人材を集め、追って合流を果たした。が、そのパートナーシップがうまくいかず、渡邊氏が札幌の人材を引き受ける形でIPTの創業へと至った。「当時(2015 年)は特定派遣法の廃止への対応もあり、まさしく走り回った一年でした」と微笑む。この過程で、元八王子支部長の関口哲也氏と知り合い、同友会に入会。翌年には成文化セミナーも受講した。八王子支部長を経て、現在は多摩協議会議長を務める。
「成文化セミナーを通して、自分なりにやってみたいことを振り返れたと同時に、同じことが社員にも言えるのではないかと改めて整理ができました。やはり、社員がやりたいことを実現できる会社を目指したい」と渡邊氏の目が輝く。そのための試行錯誤も重ね続けている。「社員に新しいサービスをつくろうと持ちかけ、複数アイデアを出し、それを絞り込んでいき、2つのプロジェクトにしました」。その際、キャリアの異なる人材でチームを組み合わせて任せると、うまく動かない。「よくよく聴いてみると、コミュニケーションの問題でした。その意味からも、自分の思ったことを伝える、そしてそれが叶うという経験は大切だと思います」。それ以降も年代で社員を分け、ミックスしてグループ化。たとえばお互いの得意分野がどこにあるのかなど理解し合うための取り組みも行った。若い人材をリーダーに抜擢し、古参メンバーの離反もあった。しかし、渡邊氏は「後悔はしていない。人が育っているから」とまっすぐな視線で組んだ指先を見つめる。
「10年後には事業承継をしていたい。私の想いを継いでもらわなくてもいいけど、よいと思ったところは引き継いでもらいたい」と氏は語る。「私自身はAI に関心があり、AI 学校をはじめたいアイデアはあるんですが、なかなか手が空かない」と笑う。
「実家は北海道の倶知安(く っちゃん)でして、ここは盆地なんです。自営業をしていた両親が休みの日には海に連れてくれって、それがとても楽しかった」。「高校を卒業して、秋田県の専門学校に。そして就職で東京へと。本当は徐々に南下して沖縄に行くつもりだったですよ。海が大好きで…」。
創設10周年を迎えるにあたり、氏は若手のマネージャーから創業までのエピソードを社員に共有して欲しいと依頼をされた。それを経ての、冒頭、初島社員旅行のひとコマである。

戻るボタン
経営を磨きたい 経営の相談をしたい 交流したい 人を採用したい