「株を譲ってもいい」 先代からのその一言にどう対処するか(2026年1月)
法人の代表を引き継いで 7 年、株はすべて前代表が所有しており、親族外の私たちは全く持っていません。そして前代表からは「今後、株の取り扱いについては、私たちの提案を待つ」と言われております。私たちには、どんな選択肢があるのでしょうか?
オーナー様の真意として、自ら後継者に指名した、最も信頼する相談者様に所有権も引き継いでもらいたいという決断を下したのだと考えることができそうです。7 年間という時間は、経営能力を見定めるための観察期間だったのかもしれません。
であれば最初にするべきことはご自分にこの会社を100% 譲り受けるだけの資金力とリスク負担の意思や覚悟があるかどうかを考えることです。正式な契約(株式譲渡契約)に向けては、第三者である専門家に株価算定を依頼するプロセスが望ましいのですが、まずは簡易な算式で目途をつけることも可能です。相談者様のケースでは、代表者として財務や業績のすべてを把握しているお立場なわけですから、情報の精度を確保するための各種手続きがいらないことは大きなメリットです。時価ベースの純資産価値に営業キャッシュフロー(営業利益+ 減価償却費)の何年か分を加えた金額が交渉の出発点となるケースが世間の相場ですので、銀行借り入れなども含めて、そういった金額が用意できるかどうかをまずは考えていただく必要があります。
それと並行して、その金額のリスク負担をするだけの価値がある事業かどうか、またご自身でその価値を高めていくだけの自信があるか、あるいは予想される将来の事業環境(の変化)に対応していけるかどうか、なども重要な判断要素です。
さらに、いわゆる「雇われ社長」とオーナー社長とでは経営に対するプレッシャーは当然ですが大きく異なります。そのプレッシャーに負けず、この7 年間と同じように会社を運営することができるかどうかも問われることになりますから、本当に慎重に考えて結論を出してください。
それらを踏まえて自分一人では難しい、という判断であれば、共同出資者になってもらえそうな信頼できる人物はいるかどうかも検討すべき選択肢となります。文中に「私たち」とあるので、すでにその候補もいらっしゃるものと思料いたしました。
それらを熟考し、ひとまずの結論を得ることができれば、オーナー様と会談の機会を設定し、それら考えたプロセスのすべてをご説明、つまり①世間の相場では〇〇円から〇〇円くらいの譲渡価格になるようである②そのくらいの金額であれば用意できそうだ③将来のこれこれやこれこれの事業環境の変化も考慮した④オーナー経営者としての覚悟もできつつある、ことなどをしっかりと伝えていただければ、オーナー様からは基本的な回答が引き出せるのではないでしょうか。また③④の内容がネガティブなもの、つまり「この金額を出してまでやりたいわけではない」と伝えるケースもありえますので、その場合、別の第三者が、例えば同業他社などが新たなオーナーとなることも考えなければならなくなります。それらも含めたご自身の意思が一番重要な部分です。
最後に注意点を一つ。銀行借り入れに当然付されているはずの経営者保証については、現時点で相談者様は何も聞かされていないかもしれません。基本的に、オーナー様からこれを引き継ぐ必要があるため、場合によって譲渡価格がいくらになるかよりもずっと大きい経済的な負担になります。会社の負債が大きい場合は①の判断よりも重要な要素になりますので、十分にご注意ください。
先崎 知之(墨田支部・東京同友会事業協同組合)
まごころフィナンシャルサービス株式会社
顧問
TEL:03-6260-3885
HP:https://www.magokoro-fs.co.jp/
e-mail: t.senzaki@magokoro-fs.co.jp
事業内容:金融商品仲介業、確定拠出年金制度の導入支援業務、M&A アドバイザリーサービス














