十人十色、虹のような会社を目指して
間宮 孝洋 氏

株式会社ファイヴエーカンパニー
代表取締役
間宮 孝洋 氏(渋谷支部)
【会社概要】
住 所 東京都世田谷区松原1-34-16
トーア明大前マンション1F
設 立 2003 年 9 月 1 日
社員数 本社社員 36 名、登録スタッフ 約 600 名
事業内容 建物清掃業(日常清掃、定期清掃、巡回清掃など)
U R L https://www.5-a.jp/
「バイト先で金髪長髪だったヘビメタ青年は、正社員となったある日、マイクをゴルフクラブに持ち替えた⋮」と書くと少し物語的すぎるだろうか。しかし、そこには理由がある。「どうせ付き合いでゴルフをやらなければならないなら、しっかりやろう」という、間宮孝洋氏のものごとへの向き合い方が現れているのだ。間宮氏は80年代のヘビメタ・ロックシーンに胸をときめかせ、90年代半ばまで夢を唄い上げ続けたバンドマンだった。
そしてバイト先であったビルメンテナンス業の社員となり、独立を果たす。
ビルやマンションの清掃業務を担うファイヴエーカンパニーには常時600 名を超えるスタッフが在籍をしている。主な業務は3つ。まず、マンションやオフィスビルの日常清掃について。「日常清掃を行うスタッフの平均年齢は72歳。最高年齢はなんと89歳です。毎年ほぼ100 名が入れ替わるので、この人手不足や人件費上昇は、会社にとって大きな課題ですね」と間宮氏。同社の社員はこうした清掃スタッフのマネジメントを担っている。
中でもユニークなのが、2019年に誕生した﹃業務サポート部ハッピー課﹄だ。現課長である田村さんは、以前から業務で何をやってもうまくいかないという悩みを抱えていた。ある日、退職をするスタッフさんとともに担当物件へ挨拶に行った際、依頼主のオフィスドアを開けた瞬間、驚きの光景を目にした。依頼主の皆さんが花束を持ってエントランスに並んでおり、担当スタッフさんに御礼を述べてくれたのだ。また当時、別のスタッフからは「あなたは頼んだ備品を忘れることもあるし、おっちょこちょい。でもね、私の話を聴いてくれるから嬉しいの」と声をかけられた。この瞬間、田村さんの中で「そうだ、ぼくは当社で働いてくれているスタッフさん一人ひとりを幸せにしたい!」とひらめきが生まれる。
「多くの日常清掃スタッフさんにとって当社が人生で最後の職場となる。であれば、仕事を楽しんでほしい。そのために一人ひとりを大切にしよう」と決意し、社内で構想を重ねて出来上がったのがハッピー課だ。現在も田村さんは、退職をするスタッフさんがいれば「卒業証書」を手渡したり、誕生日にはメッセージを書いたはがきを送ったりと、温かい文化を育んでいる。冒頭の “何ごとも時間を使うなら、しっかりやろう”という社長の姿勢が社内文化として息づいている。
次いで2つ目の業務は社用車にポリッシャーや高圧洗浄機を積んで機械洗浄を行う「定期清掃」。3つ目がバイクに清掃用具を積み、比較的世帯数の少ないマンションや小規模のビルなどの清掃を受け持つ「巡回清掃」業務だ。
これらの2つの業務(それぞれ30~40名ほど)を受け持つのは比較的若い世代である。同社はどのように若い世代の働き場所をつくりあげているのであろうか。きっかけは2017年、同じ業界の先輩にあたる森下彰氏(文京支部)からの一言だった。「間宮君、いま僕はいわゆるニート・引きこもりと言われている若者に働く機会を提供する活動をしているんだ。君も手伝ってくれないか?」と。そうして若者の集まる会合に参加した間宮氏は衝撃を受ける。そこにいたのは世間一般のニート・引きこもりのイメージとはほど遠く、真剣に悩み考えている若者たちだったのだ。そして、社会との接点(場)を自社で提供できないかと考えはじめ、実践をはじめた。その結果、同社で社会との接点を見出し、世に出ていく若者が増えてきた。もちろん、そのまま同社にて働いてくれている若者も多く、彼ら彼女らの活躍がファイヴエーカンパニーの大きな力になっているのだ。
若者からは「給料よりも、自分の居場所が見つかったことが嬉しい」といった声も届いている。
「我が社はもともと“居場所”という感覚を大切にする風土はあるかもしれません。ただ、それがなぜなのかはわからない」と間宮氏は語る。バンドマンを辞めて、正社員となってしばらくした1997年。ある本をきっかけに “ミッションステートメント” を書いたという。「当時はミッションを夢と置き換えていたんです。でも、いまはそうではないと言えます。ミッションとは与えられた命をどう使うか、ではないかと。だから、若い子たちには本当にありのままの自分を大切にしてほしい」と前を見つめる「あるがままでいい。当社はその力になりたいし、そういう場所でありたい。そして一人ひとりがそれぞれの夢を語れるようになって欲しいし、さらにそれを使命にまで昇華出来たら素晴らしい。」その芯のある声は、周囲に深くしみわたっていった。