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中小企業家群像

ツクルをつくる 関わる人の未来をつなぐ"ものづくり"を目指して
渡辺 大 氏

株式会社 芝橋
代表取締役
渡辺 大 氏(大田支部)

【会社概要】
住 所 東京都大田区西糀谷2-7-15
創 業 1905年(明治38 年)
事業内容 各種省力機械の設計・製造、OEM受注生産
従業員 11 名
U R L https://www.sibahasi.co.jp/

すべてのものは2度つくられる、という言葉がある。目の前にある製品やサービス、実はこれは2回目に手がけられたものだ。はじまりは現実の前。つまりアタマの中で創造がなされる。
創業1905 年、今年120 周年を迎えた㈱芝橋、渡辺大氏の話を伺うと「2度つくられる」もまた二重の意味を持つことになる。ひとつはメーカーとしての同社の強み、図面と仕様の作成からのものづくりを担う点。そしてもうひとつは広義の意味を持つ。それは、大手メーカーが製造に用いる装置こそ、中小企業が開発・製造し、支えているのだという視座である。
芝橋は明治38年、日露戦争後の港区にて「芝橋鉄工所」として創業。当時は外国製船舶のエンジンの修理を専門としていた。次いで曾祖父の大正時代、現在にもつながる印刷分野へ進出。当時は活版印刷機を製造開発し、メーカーとして展開。祖父の代には印刷技術も進展し、業界は活版印刷からオフセット印刷へ。これに合わせて同社は印刷機械の修理へと事業領域をシフトせざるをえなくなった。そして父君鉦弘氏によって省力機器という分野へと社内資源を育んでいくこととなる。
「父は工業系の大学を出ており、技術にも明るかったのですが、人が働く環境にも配慮をしていました。いわゆる3K(きつい、汚い、危険)をなくすこと、そして経験・勘を排除する取り組みなどです」と渡辺氏。父君の着眼点は社内のみならず、取引先の作業環境にも向けられていた。先に挙げた省力化の例を述べるならば、このような自社開発製品がある。それは印刷工場向けの印刷用紙積み上げ、反転装置だ。印刷現場では当たり前ながら、印刷機に大量の紙を装てんする必要がある。従来、この補充は人の手で用紙の束を動かしたり、裏面印刷用にひっくり返したりと重労働で、1日何トンもの作業量になったという。これでは女性の社会進出をはじめ、若い働き手がいつかない。そう考えた父君がこれら積み上げ・反転を出来る装置を開発したのであった。
なによりも自社で図面を引いて、開発・製造をできる、というのが芝橋の独自資源だ。「その他、有難いことに自社製品はいくつかあり、共通する要素があるとすれば、モーターの知識、エアや油圧でポンプをいかに微調整できるようにするかなどでしょうか。これを下地にアイデアや想像力をたくましくするのが私たちの強み。そして現場を見ることを忘れず、そこでの困りごとがあれば解決のお手伝いをしたいと考えています」と語る。芝橋の製品ラインナップは一見、それぞれ関連がないように見えるが、ここでも2度つくられる過程を経ているのだ。
中小企業製造業がなければ、日本の大手メーカーのものづくりも弱体化の一途をたどっていってしまうと危惧する渡辺氏。「先人からいただいた教えで現在がある。それゆえ次の世代に恩送りをしたい」とは、氏からいくども出てきた言葉である。
恩送りのひとつは父君から引継がれ、会員となった東京同友会のこと。もうひとつは社内のことだ。渡辺氏は現在、大田支部長を務めるが先輩経営者からいただいてきた助言には考えさせられることが多かったという。また支部では製造部会の立ち上げにも携わった。現在は大田支部内での製造業会員の交流はさることながら、インターンシップ生の受け入れと受け皿企業の輪は支部を超え、ネットワークを整えている最中。加えて広島県福山市と東大阪の各地同友会との交流も実施。また受講した成文化セミナーを通して、「ツクル を つくる」という経営理念を生み出すこともできた。
そして社内では先代からの社員と若手社員の技術継承に取り組んでいる。「当社の製品は長年愛用くださる企業が多く、その保守も重要。これには図面を見ながらどのように整備をするかなどの知見が求められます。先達たちが作ってくれた技術をどのように次の世代に渡していくか。幸い、いまの工場長は中学生時代の同級生。彼のサポートをもらいながら、私たちの代で環境が整うようにもっていかないといけない」と静かに前を向く渡辺氏。
同社の製造プロセスは、ひとり一人が製品を作り上げる方式のため、社員は裁量をもって働くことが出来るという。製造業では珍しいフレックス制度を導入している。また2020 年にはいまの働き方に対応すべく大田区の「優工場」の認定も受けた。また高度外国人材としてコロナ禍前に採用したベトナム人社員も若手として期待を受ける。
「120 周年を機に、会社のロゴや作業着などをリニューアルしました。複数候補を用意し、あとは社内投票の民主主義。世代ごとに好みが分かれましたね。もちろん、私の投票は…通らなかったです」と笑う。
「芝橋は製造現場をプロデュースすることが役割」。すっと渡辺氏から出たこの言葉に、幾重もの広がりと可能性を感じた。

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